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 私と勇者が出会った日まで遡る──    村の薬屋の娘として生まれた私は、物心ついたときには薬草が大好きだった。  なんの変哲もない葉っぱが毒消しになったり、火傷を綺麗に治すなんて不思議で神秘的でわくわくする。お店で使う薬草を丁寧に摘んでいけば、お父さんとお母さんに褒めてもらえるし、運がいいと薬を作るお手伝いもさせてくれるのも嬉しい。  今日も朝から籠を持って森へ出掛けることにした。  今の季節は、傷によく効く実がなるから沢山摘んで帰ろう。川辺に沿って歩いて行けば、目的の茂みにたどり着く。 「つやつやで真っ赤な実がいいってお父さんが言ってたよね」  ひとつひとつ確認してから摘むと、プツン、と小気味のいい音がする。夢中になって摘んでいると、ガサッと近くで音がした。 「?」  なんだろうと思って音のした方に視線を向けると、灰色のもふもふしたかたまりが茂みの下に見える。野生動物にはむやみに近づいてはいけないと言い聞かされているから、灰色のかたまりを見つめたまま後ろに一歩下がった。 「きゅうん……」 「あれ? もしかして怪我をしてる?」 「きゅうん」  ちょこんと出している足が赤黒く汚れている。土とは違う色が気になって近づくと血で濡れていた。身を屈めてみると、灰色のかたまりは子犬だった。子犬の青色の瞳と見つめあう。 「あなた怪我をしてるのね? あのね、私が手当てをしてもいいかな?」 「きゅうん」 「抱っこするけど、嫌がらないでくれる?」 「きゅうん」  随分賢い子犬のようで言葉が通じている。怪我しているところに触れないように子犬を抱っこした。川まで連れて行って、血を洗い流す。洗ったら灰色の毛が銀色みたいに綺麗になって驚いた。
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