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 私よりひと足先に、まもなく成人を迎えるヒューゴだけど、ずっと変わらず迷子を怖がっていた。この国の成人は男女共に十七歳。結婚や独立など、様々なことが自分で出来るようになる。   「もう、しょうがないなあ」 「ありがとう、エリサ」  ヒューゴに両手を広げると、すぐに抱きしめられた。首すじに落ちる私の癖っ毛を横に避けてから、むき出しの首すじをすううう、深く匂いを吸い込む。唇を押し当てて、吸い込み、少し移動して、唇を押し当てて吸い込むを繰り返す。 「はあ、エリサいい匂いがする……!」 「ん、っ、ヒュー、ゴにもらった石けん、ちゃんと……使ってる、ひゃ、ん……っ」 「うん、俺と同じ匂いが混ざってて、こうふ、落ち着くよ」 「っ、耳元でしゃべっちゃ、や、ぁ……」 「ん、ごめん」  どんどん熱心になる匂い嗅ぎが恥ずかしくて、匂いが強い石けんを使ったら、ヒューゴが使っている同じ石けんを贈られるようになった。さわやかなお花の香りがする石けんは、ヒューゴの匂いがするから使うときにいつもヒューゴを思い出す。  反対の首すじも終えて、鼻にキスをされた。 「ああ、今日もエリサを補充できた」  満足そうなヒューゴは、カモミル草が沢山生えている場所に連れて行ってくれた。 ܀ꕤ୭* ܀ꕤ୭* ܀ꕤ୭*  その三日後、魔王が復活したという知らせが世界を駆け抜けた── 「エリサ、絶対に一人で薬草採取に出かけないでね」 「森の奥じゃなければ大丈夫だと思うけど?」 「絶対だめ! 必ず俺と一緒に行くって約束して!」 「…………ヒューゴか師匠と一緒に行けばいい?」 「約束だよ」  魔王が復活するのは三百年ぶりのことで、特に実感が湧かない。でも、新聞や噂によると、これから魔物が活性化して凶暴になり数が増えるらしい。森の奥にいる魔物が、いつ村の近くの森に出てくるかもしれないから一人で森に入らないように約束させられた。
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