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横取りする女
アイドルみたいに可愛い女の子がいる。名前はミカ。笑顔がとびきり可愛い。ミカは私の女友達。ミカと私は、小学校、中学校、高校と同じ学校に通ってきた。
そして今も、ミカと私は同じ大学に通っている。私とミカは親友だ。
――けれどその親友に、私に好きな男が出来たことは、けして悟られてはならない――
私は大学に入ると、すぐ好きな人が出来た。同じサークルの先輩だ。名前は長田義人さんと言う。普通の容姿だけど、笑顔が素敵で気遣いのできる男性だ。私は細心の注意を払いながら、彼とミカを会わせないようにしつつ、徐々に彼との距離を詰めてきた。
彼とだいぶ親しくなってきた頃だった。サークルが終わって、私は彼に誘われた。
「亜希菜ちゃん。この後、何か用事ある?」
「特にはないです」
「じゃぁ。カフェの割引券貰ったんだけど。今日までの期限なんだよ。だから一緒に行かない?」
私は長田先輩に見せられた割引券を見て言う。
「良いですね。そこ、行ってみたかったんです」
――私は内心やったーと声を上げていた。
長田先輩は嬉しげに「本当? じゃ、行こう」と言って歩き出した。
大学を出て少し進むと、背中から声を掛けられた。
「亜希菜ちゃん。今帰り?」
良く知っている声だった。
恐る恐る振り返えると、やはりミカだった。
私の背筋が凍る。
「……ミカちゃん。なんでここにいるの?」
「だってぇ。一緒に帰りたくてぇ。亜希菜ちゃんを待っていたんだよ」
――私は、マズいと思った。
ミカの視線は長田先輩だ。
「二人で何処行くんですか?」
ミカが先輩をジッと見つめている。先輩は戸惑うようにミカを見た。ミカと先輩が見つめ合う。
――私はまたかと思う。
私がミカに言う。
「私、これから先輩とカフェに行くから。待っていてくれたのに、ごめんね。一緒に帰れないよ」
ミカがはしゃいだように「え? 私も行きたい」と先輩にせがんだ。
ミカが先輩に笑いかける。ミカの笑顔はとびきり可愛い。ミカの笑顔に敵う男などいない。
先輩がデレデレした。
「亜希菜ちゃんの友達なんだね。いいよミカちゃんも一緒に行こう。俺が奢るよ」
「いいんですか?」
「いいよ。行こう」
私はやられたと思う。
――最悪な展開だった。
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