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それから2週間ほどした時、ミカと先輩が腕を組んで歩いているところに、私は出くわしてしまった。
先輩が嬉しげに言った。
「亜希菜ちゃんのお陰で、俺にもこんな可愛い彼女が出来たよ」
私は微笑んで言った。
「良かったですね」
「うん、ありがとう」
――私のお腹に、どす黒い澱がまた1層、地層のように重なっていくのを感じた。
ミカは可愛い。それをミカは自分でよく知っているのだと思う。小さくて小動物みたいなミカ。ミカと並べば、誰だってミカを好きになる。
そして何故かミカは、私が好きになる人を奪っていき、飽きるとゴミクズみたいに捨てる。長田先輩もそのうち飽きて捨てられるのだろう。長田先輩なんか捨てられたら良いと私は思った。
――ミカのせいで、私のお腹には黒い澱が、ミカの男を横取りされるたび、地層のように沈殿していく。
その後私は、バイトを始めた。
バイト先で気になる男性が出てきた。
初めは好きじゃなかったけど、話しをするうちに段々好きへ変わっていった。
山下恵吾くんという、22歳の大学生だった。
山下くんがバイト終わりに言った。
「明日、映画でも行かない?」
私は二つ返事で答えた。
「行く! 行きます」
私の勢いに、山下くんが嬉しそうに笑った。
私は嬉しくて、誰にも教えてないSNSのアカウントで投稿した。
”明日映画に誘われた。『リア恋』って言う映画。大学近くの映画館で待ち合わせした。マジ嬉しい”
明くる日、私と山下くんは映画館で待ち合わせた。私はウキウキして、映画館に急いだ。映画館のチケット売り場前に山下くんが見えた。私は山下くんの傍に小走りで近づく。
私に気が付き、山下くんが少し驚いて聞いた。
「あれ、亜希菜ちゃんは友達も連れてきたの」
私は「えっ」と言って、山下くんの視線の先を見た。
ミカだった。
私は流石に驚いて聞いた。
「ミカちゃん。なんでここにいるの?」
「偶然だよ。さっき見かけて、後を追って来たの。映画を見るの?」
「そうだよ」
ミカが山下くんを見つめた。
飛び切りの笑顔でミカが「私も一緒に見たいなぁ」と言った。
「ああ、俺はかまわないけど」
山下くんは照れて見えた。
私は(山下くんとは終わった)と思った。
そして案の定、ミカに山下くんをとられてしまった。とても呆気なく、山下くんはミカの彼氏になった。
ミカと山下くんが付き合い始めて少し経った頃。私はミカを、私の一人暮らしのアパートに呼び出した。とうとう我慢の限界に達したのだ。
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