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私は直球で尋ねた。
「山下くんと付き合い始めたけど、長田先輩とはどうなったの?」
「知らない。どうなったんだろう? ラインをブロックしたから、その後どうなったか知らない」
ミカの目は泳いでいる。
私はキツい口調で問いただした。
「私が長田先輩を好きだって知っていたよね?」
「うん、知ってた」
「長田先輩を私から奪って、直ぐ捨てて。今度は山下くんまで奪って……。どうせ山下くんも直ぐ捨てるんだよね」
「捨てるよ。別に好きじゃないし」
私はミカの答えに唖然とした。
流石にカッとして「何でそんな事するの?」と責めた。
ミカは泣き出しそうな表情を浮かべる。
「だって……。私が少しちょっかい出したら、あの二人はすぐに私に乗り換えたんだよ。亜希菜には、そんな男と付き合って欲しくないんだもん」
ミカの可愛い素振りに、私はほだされそうになる。
(しかしもう許してはいけない。いつまでも繰り返されてしまう)と私は思った。
高校で好きな男をとられるまでは、ミカとは本当に仲が良かった。掛け替えのない親友だと思っていた。なのに高校1年の秋に、好きになった男をミカにとられた。その時、私のミカへの気持ちが変化した。
それでも私はミカとの友情を終わりにはしなかった。
――ミカが私から横取りした男より、ミカのほうが大切だったからだ。
私は、彼はミカを選んだのだから仕方ないと思うことにした。私は彼を諦め、二人を祝福することにした。でも二人は1ヶ月もしないで別れてしまった。
その後2度もミカは、私の好きになった男を横取りした。その度私はミカを許した。なのにミカは直ぐその男と別れた。
私は高校3年になって決心した。
(ミカとは別の大学に行く。ミカが行く大学とは、できるだけ遠い場所の大学が良い。これ以上同じことを繰り返されたら、私がミカを許せなくなる日が必ずやってくる。取り返しのつかなくなる前に、離れたほうが良い)
私はミカに、何処の大学を受けるか教えなかった。大学受験まで慎重に情報を管理した。別の大学に進学したら、ミカの行いから開放されると思っていた。
――でも逃れられなかった。
ミカは私と同じ大学に進学したのだ。ミカが私と同じ大学を受けて合格したのを知ったら、私が違う大学に進路を変えてしまうとミカは知っていたのだろう。ミカは隠れて、私と同じ大学を受けていた。私がミカと同じ大学に入学したことを知ったのは、大学に入学してからだった。
ミカはストカーみたいに私の後をつけて、高校でしたことを、大学でも繰り返している。ミカとの友情を壊したくなくて、今まで我慢してきたけれど、度重なったミカの驕傲さに、我慢ができなくなった。
友達を止める覚悟で、心に溜めた黒い檻を吐き出してた。
「だからって、毎回、私が好きになる男性を奪うのは止めてくれない。高校からずっとだよ。流石に、もう止めてくれないかな。これ以上こんな事されたら、ミカとは友達でいられないよ。いつもいつも、私の好きになった人を奪って、何が楽しいの? 私のことをバカにしているんでしょう! 私よりミカは可愛いから、私から奪い取るなんて楽勝ですもんね? それで優越感に浸っているんでしょう? 今までは、好きになった男より、ミカとの友情が大事だったから我慢したけど。そのうちきっとミカを超える男が出てくる。その男をとられたら、ミカとは友達を続けられなくなる。だから、もうこんな仕打ちはやめて欲しい!」
――負の感情が止まらない。
ドロドロした黒い感情がお腹から口に向かって吹き出してしまう。頭の中がグシャグシャで、収集のつかない気持ちが溢れてしまった。
私の毒気を浴びたミカが、悲壮感溢れる顔で「ごめんさない。でも、嫌なの」と言った。
私は意味がわからず、戸惑って「……何が嫌なの」と聞いた。
ミカが眉を潜めて言う。
「私の好きな亜希菜が、誰かと付き合うのが嫌だから。亜希菜が男と付き合ったら、嫉妬で身が焦げそうだよ」
私は思いもよらないミカの言葉に理解が追いつかない。
「私の好きな人は亜希菜だよ。だから亜希菜に寄ってくる男は、私が誘惑して追い払ったの」
ミカが私を抱きしめた。
「私は亜希菜が好きなの。ずっと好きだった」
ミカの顔が私に顔へ近づいて、私はキスされた。私はミカの不意打ちに呆然として、抵抗するのを忘れた。
――優しいキスだった。
私の頭や身体が真っ白になった。
――fin――
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