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夏が近づき、毎日暑い日が続くようになった。
そうなると体育の時、誰からともなくこんなことを口にするようになる。
「そろそろ体育はプールがいいよな」
それを聞くたび、俺は心の中で『冗談じゃない』と思うんだ。
藻に覆われ、緑に濁ったプール。そこから水が抜かれたら、中に沈んでいるものが見えてしまう。…『俺』が見つかってしまう。
去年の冬休み、いたずら目的でプールに忍び込んだ。
その時は何をしようとしていたのか、今となっては思い出せない。
ただ、何か悪さをしようとして、俺はプールに落ちたんだ。
水は冷たく、すぐさま俺の全身は冷えて痺れ、俺はろくにもがくこともできないまま水の底へと沈んでいった。
そこから記憶ははっきりしないけれど、気づいたら俺はプールの端に立っていた。
だけどその時、自分がもう死んでいることを俺は自覚していたよ。
以来、誰にも気づかれぬまま、幽霊の俺はそれまで通りの学生生活を続けている。
でもプールの水が抜かれたら、そこに死体が沈んでいることがバレてしまう。調べれば、それが俺だと判ってしまう。
そうなった時、俺はもうこの生活を続けられない。あの世へ行くしかないと確信してるんだ。
ああ、何かの理由で、今年はプールを使わないし、掃除もしないということになってくれないかな…無理だろうな。
どんどん強くなる日差しと、毎日更新され続ける最高気温。
夏はもう間近。プール開きのために掃除が行われる日も間近だ。
プール開き…完
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