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太陽の中で初めて瑠奈に対する別の感情が湧き出した。
「帰れ!」
もう一度瑠奈に言い放つと、太陽はテーブルの上に置いてあった、水族館で買った小さな袋を瑠奈に投げつけた。
そして、頭から布団を被った。
やがて、カバンから落ちたものを拾う音、それから衣擦れの音が小さく聞こえ、キッチンと部屋とを隔てるドアの開閉音、そして玄関の鍵が開けられる音がした。
玄関が開けられ、小さな靴音と、ゆっくりとドアが閉まる音が聞こえて、静寂がやってきた。
瑠奈は一言も言葉を発しなかった。
「何か言えよ……言い訳でもなんでもいいから、言ってくれよ。何で何も言わないんだよ……」
数時間後には起きて、バイトに向かわなくてはいけない。
もう必要ないかもしれないと思いながらも、行くと約束したからには、それをドタキャンするようなことはできない。
元々、瑠奈のためのバイトだった。
太陽は瑠奈と迎える「初めて」のために、最高のシチュエーションをプレゼントしたかった。
瑠奈の希望は「ホテルミラコルテに泊まりたい」というものだった。
ホテルミラコルテは5つ星ホテルの上に、12月24日はクリスマスで値もはる。
それでも瑠奈のために2泊予約した。
太陽は瑠奈の「初めて」を思い出に残る最高のものにしようと決めていたからだった。
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