アルバイト

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最終日は、講師を招いての陶芸体験だった。 森さんから「3人も参加したらいいよ」と言ってもらい、やらせてもらうことになった。 金井と碓井がマグカップを作る中、太陽は葉っぱの形のお皿を作った。 「ねぇ、もしかして日下部くん、不器用?」 「皿って、それただぺたんこに潰しただけだよな?」 「ほっとけ。こういうのは苦手なんだ」 「日下部くんでも苦手なものあるんだね」 碓井がケラケラと笑った。 金井が早々に作り終えて、席を立ったので、太陽は碓井に話しかけた。 「……ちょと、聞いてもいい?」 「私?」 「うん。あのさ、スマホの電源を切ってる時ってどんな時?」 「えー? ないよ、そんなこと」 「充電切れたら?」 「バッテリー持ってるから。でも、故意に切るとしたら……何かやましい時とか?」 「……やっぱ、そうだよな」 「もしかして彼女?」 「……まぁ」 「やめときな、そういう女は」 太陽が弱々しく笑うのを見て、碓井は付け加えた。 「それか、よっぽどの事情がある時」 「よっぽどの事情って?」 「そんなの本人にしかわからないよ」 「だよな」 「話してみてよ。何か言ってあげられることあるかもしれない」 「それは……」 「あのさ、私達、二度と会うことないと思うんだ。だからこの先気まずくなることもないよ?」 そう言われて、太陽も話してみる気になった。 「……彼女、スマホ2台持ってるのがわかって、オレが番号知ってる方だけ電源切ってた」 「あー……ごめん。それは、クロだわ」 「やっぱそうだよな」 「まだ好きなの?」 「すぐに気持ち切り替えるなんて無理」 「はっきり別れ話した?」 「一方的にオレが怒って、そのままこのバイト来たから話はしてない」 「私に言えることあったわ」 「何?」 「有耶無耶にしたら引きずる。キッパリ終わった方がいい」 「そっか」
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