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「その後のことは、日下部くんがよく知ってるでしょ? 瑠奈は日下部くんと付き合えることになってすごく喜んでた。でも……大学生活は瑠奈にとって思ってた以上に負担で……」
奈帆の目が再び涙で滲んだ。
「だんだん学校行けなくなってきて……でも、心臓のこと知られたくないって……それに……」
ずっと黙って奈帆の話を聞いていた太陽がようやく口を聞いた。
「それに何?」
「自分がいなくなった後、日下部くんに悲しんでほしくないからって……瑠奈は日下部くんと別れることを決めた。瑠奈から別れを切り出すんじゃなくて、わざとわがままを言ったり、嫌な女だって思われるようにして、日下部くんが瑠奈を嫌いになるように……」
「なぁ、どうしてそこにオレの意思はないわけ?」
泣きそうな顔で太陽が奈帆に言った。
「なんで、オレの気持ちを無視して勝手に決めてんの?」
「あの時は、あれが……一番いい方法だって、思ったから……」
「基町ってやつもグル?」
「基町?」
「そいつもお前らの計画の一部?」
「誰、それ?」
「もう全部バレたんだから今更嘘ついたって――」
「そんな人知らない」
「井坂が言ったんじゃないか。瑠奈は証券会社に勤めてる男と付き合ってるって」
「そんな人本当はいないから、だから知らないよぉ」
(基町は瑠奈の胸にほくろがあることを知っていた。だから絶対に親しいはずなんだ)
「わたしの知ってる瑠奈は、最後まで日下部くんのことを好きだった」
太陽をじっと見ている奈帆の表情は、嘘をついているようには見えなかった。
(だったら、あいつは誰なんだ?)
「……ごめん。井坂が悪いわけじゃないのに」
「日下部くん、このURLに多分瑠奈の日記が書かれてる。そこに、わたしも知らないことが書いてあるかもしれない」
奈帆はURLの表示された自分のスマホを太陽に見せた。
「ID教えて。URL送るから」
太陽が奈帆にメッセージアプリのIDを教えると、すぐにURLが記載されたメッセージが送られてきた。
「さっきの『多分』って、どういう意味?」
「パスワードがかかってて中が見れないの。日下部くんなら見れるかもしれない。瑠奈の本当の気持ち。前に聞いたことがあるからIDはmoon1224のはず。ごめんね、日下部くん」
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