パスワード

1/1

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ

パスワード

深呼吸をすると、太陽は奈帆に教えてもらったURLにアクセスした。 奈帆の言った通りIDとパスワードを入力する画面が表示された。 聞いていたIDを入力して、パスワードに入れる数字を考えた。 (無難なところで誕生日とか?) 太陽はまずは瑠奈の誕生日を入力したけれど、画面には「パスワードが間違っています」の文字が赤色で表示されただけだった。 続いてスマホの番号、学籍番号、と思いつく数字を試したがどれも違っていた。 パスワードの入力欄に「英数字」と書いてあることに気がついた。 どうやら数字だけではないらしい。 そこで、瑠奈の名前をローマ字や英語の綴りなどにしたものと、誕生日などの数字を組み合わせてみたけれど、どれも違うようだった。 (意味のない英数字ならお手上げだよなぁ) 太陽はベッドに横たわった。 太陽の知っている瑠奈の好きなものと誕生日を合わせたものを入力していったけれど、それも全てエラーとなった。 その時、萌ちゃんからもらった手紙を思い出した。 『たいようくんがピーマン好きって言ったから、もえも好きになったよ』 (オレの好きなものとか?) 太陽が、実家で飼っているゴールデンレトリバーのジェシーを抱きしめて寝ている写真を見た時に、瑠奈が言ったことを思い出した。 『いいなぁ、ジェシーは。日下部くんに愛されて』 jesse1203 太陽はパスワードの欄にジェシーの名前と誕生日を入力したが、やはり違っていた。 jesse0216 2月16日は、瑠奈の誕生日。 これも違っていた。 jesse0109 1月9日は、太陽の誕生日。 これも違う。 (8月7日?) 8月7日に何の意味があるのか太陽にはわからなかったけれど、瑠奈が水族館に行きたいと言った日。 jesse0807 スマホに管理画面が表示された。 瑠奈がつけていた日記。 他人の秘密を覗き見るのは良くないことだとはわかっていながら、太陽はどうしてもそれを見たかった。 瑠奈が何を思い、どういう気持ちで太陽と過ごしていたのかを知りたかった。 「ごめん」 そこにいない瑠奈に謝ると、太陽は「投稿一覧」というアイコンをクリックした。 開いたページには、リンクの貼られた日付が一覧表示されていた。 数はそんなに多くない。 太陽は一番下の、古い日付のものをクリックした。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加