瑠奈の日記

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********************* ×月×日 日下部くんと初めて手をつないだ 理由なんてなくていい 何となくで構わない ********************* 朝、太陽が講義のある教室に入ると、瑠奈が何か雑誌を見ていた。 「何読んでるの? 真剣な顔して」 太陽が話しかけると、顔を上げた瑠奈が嬉しそうな表情を見せる。 「文具特集が載ってて。これとか可愛いなぁ、って見てた」 「ふうん」 太陽には「可愛い」がよくわからなかったけれど、瑠奈が「可愛い」と言うなら、可愛いんだろうと思った。 「西京百貨店で文具フェアやってるみたいだけど、行ってみる?」 「そうなんだ。じゃあ学校終わったら寄ってみようかな」 「違うって」 「何?」 「一緒に行こう、って誘ってるんだけど?」 「え! 嘘!」 「そんな驚く?」 「行きたい。一緒に……行きたいです」 「そんな真面目にとらなくても。友達じゃん」 「うん。友達だよね」 大学の外で2人になるのは、入学式を出損ねた日以来だった。 お互いどことなく緊張しながら、西京百貨店に行った。 文具フェアの会場は、若い女性客でいっぱいで、その人の多さに2人は驚いた。 「人気なんだ」 「みたいだね。それに女の人ばかり。日下部くん、ここでいいよ」 「なんで? 一緒に見たいんだけど?」 「いいの?」 「うん」 2人で会場に入って、順番に文具を見て行った。 さすがフェアと銘打っているだけあって、見たことのない文具ばかりだった。 太陽には、花の形に穴を開けられるパウチの用途がわからなかったけれど、瑠奈はそれを「可愛い」と言って見ていた。 中へ進むにつれ人が増えていき、瑠奈とはぐれそうになった時、太陽は思わず瑠奈の手をとった。 そうしないと、太陽の前から瑠奈がいなくなってしまいそうで、「離れたくない」と思った。 そのまま、何も言わず、手をつないで会場を回った。 会場を出た後もそのまま手をつないでいた。 「どっかで何か飲む? 人混みでやられた」 「そうだね、わたしも座りたい」 近くのカフェに入るまで、手をつないでいた。
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