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×月×日
日下部くんと初めて手をつないだ
理由なんてなくていい
何となくで構わない
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朝、太陽が講義のある教室に入ると、瑠奈が何か雑誌を見ていた。
「何読んでるの? 真剣な顔して」
太陽が話しかけると、顔を上げた瑠奈が嬉しそうな表情を見せる。
「文具特集が載ってて。これとか可愛いなぁ、って見てた」
「ふうん」
太陽には「可愛い」がよくわからなかったけれど、瑠奈が「可愛い」と言うなら、可愛いんだろうと思った。
「西京百貨店で文具フェアやってるみたいだけど、行ってみる?」
「そうなんだ。じゃあ学校終わったら寄ってみようかな」
「違うって」
「何?」
「一緒に行こう、って誘ってるんだけど?」
「え! 嘘!」
「そんな驚く?」
「行きたい。一緒に……行きたいです」
「そんな真面目にとらなくても。友達じゃん」
「うん。友達だよね」
大学の外で2人になるのは、入学式を出損ねた日以来だった。
お互いどことなく緊張しながら、西京百貨店に行った。
文具フェアの会場は、若い女性客でいっぱいで、その人の多さに2人は驚いた。
「人気なんだ」
「みたいだね。それに女の人ばかり。日下部くん、ここでいいよ」
「なんで? 一緒に見たいんだけど?」
「いいの?」
「うん」
2人で会場に入って、順番に文具を見て行った。
さすがフェアと銘打っているだけあって、見たことのない文具ばかりだった。
太陽には、花の形に穴を開けられるパウチの用途がわからなかったけれど、瑠奈はそれを「可愛い」と言って見ていた。
中へ進むにつれ人が増えていき、瑠奈とはぐれそうになった時、太陽は思わず瑠奈の手をとった。
そうしないと、太陽の前から瑠奈がいなくなってしまいそうで、「離れたくない」と思った。
そのまま、何も言わず、手をつないで会場を回った。
会場を出た後もそのまま手をつないでいた。
「どっかで何か飲む? 人混みでやられた」
「そうだね、わたしも座りたい」
近くのカフェに入るまで、手をつないでいた。
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