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×月×日
奈帆、今度はお葬式で田舎に行ってしまった
奈帆のために頑張ってノートをとってる
電話じゃなくて、会って話したいことがいっぱい
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×月×日
初めてクレープを食べた
初めて キスをした
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午後の授業が終わり、瑠奈が帰り支度を始めたところで、当たり前のように太陽が声をかけてきた。
「帰ろう」
文具フェアに行って以来、2人はほとんど毎日一緒に帰っていた。
そこに山里が混ざることもあったけれど、選択している授業の違いから、2人きりのことの方が多かった。
ほとんどが真っ直ぐ駅に向かうだけだったけれど、時々カフェに寄ることもあった。
太陽はゆっくり歩く瑠奈にいつも歩調を合わせていた。
駅前まで行くと、ちょっとした広場にクレープのキッチンカーが来ていて、数人が並んでいた。
瑠奈がそれに視線を向けながら改札に向かって歩いていることに、太陽が気がついて誘った。
「食べる?」
「えっ?」
「そんな驚かなくても。欲しそうにしてたから」
「クレープ、食べたことないから」
「マジで? だったら買いに行こう」
「行きたい! でも……」
「全部食べれなかったら、オレ食べるし」
「いいの?」
「2種類食べられてラッキー」
「食べたい」
2人で少し並んでクレープを買った。
瑠奈は散々迷って、バナナチョコクリームを選んだ。
太陽がクリームチーズベリークリームを注文した時、瑠奈は不思議そうな顔をして見ていた。
キッチンカーの周りのベンチが全て埋まっていたので、ベンチを探して川沿いまで歩いている途中、瑠奈が言った。
「クリームチーズとかベリーとか日下部くんって意外」
「限定って書いてあったからつい。吉高はなんでバナナチョコクリーム?」
「ティラミスいいなぁ、って思ったら12月限定だったから。2番目に食べたいのにした」
「じゃあさ、12月にまた来ようよ」
瑠奈は「うん」と短い返事をした。
ベンチに並んで座り、クレープを食べ始めてしばらくして、瑠奈は太陽がじっと見ていることに気が付いた。
「何?」
「きれいに食べるなーと思って。ちょっとくらいクリームをつけたりするかと思ったのに」
「子供じゃないんだから、そんなのないよ」
「でも、よくマンガとかであるじゃん? 米粒を口の横とかにつけるやつ」
「そんなのつけてる人見たことないよ」
「でも、それだとさ、『クリームついてる』とか言って、こういうのできないでしょ?」
そう言って、太陽は瑠奈に軽いキスをした。
それから、太陽はそのまま動かないでいる瑠奈の頬にそっと手でふれると、もう一度今度は少し長くキスをした。
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