瑠奈の日記

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********************* ×月×日 奈帆、今度はお葬式で田舎に行ってしまった 奈帆のために頑張ってノートをとってる 電話じゃなくて、会って話したいことがいっぱい ********************* ×月×日 初めてクレープを食べた 初めて キスをした ********************* 午後の授業が終わり、瑠奈が帰り支度を始めたところで、当たり前のように太陽が声をかけてきた。 「帰ろう」 文具フェアに行って以来、2人はほとんど毎日一緒に帰っていた。 そこに山里が混ざることもあったけれど、選択している授業の違いから、2人きりのことの方が多かった。 ほとんどが真っ直ぐ駅に向かうだけだったけれど、時々カフェに寄ることもあった。 太陽はゆっくり歩く瑠奈にいつも歩調を合わせていた。 駅前まで行くと、ちょっとした広場にクレープのキッチンカーが来ていて、数人が並んでいた。 瑠奈がそれに視線を向けながら改札に向かって歩いていることに、太陽が気がついて誘った。 「食べる?」 「えっ?」 「そんな驚かなくても。欲しそうにしてたから」 「クレープ、食べたことないから」 「マジで? だったら買いに行こう」 「行きたい! でも……」 「全部食べれなかったら、オレ食べるし」 「いいの?」 「2種類食べられてラッキー」 「食べたい」 2人で少し並んでクレープを買った。 瑠奈は散々迷って、バナナチョコクリームを選んだ。 太陽がクリームチーズベリークリームを注文した時、瑠奈は不思議そうな顔をして見ていた。 キッチンカーの周りのベンチが全て埋まっていたので、ベンチを探して川沿いまで歩いている途中、瑠奈が言った。 「クリームチーズとかベリーとか日下部くんって意外」 「限定って書いてあったからつい。吉高はなんでバナナチョコクリーム?」 「ティラミスいいなぁ、って思ったら12月限定だったから。2番目に食べたいのにした」 「じゃあさ、12月にまた来ようよ」 瑠奈は「うん」と短い返事をした。 ベンチに並んで座り、クレープを食べ始めてしばらくして、瑠奈は太陽がじっと見ていることに気が付いた。 「何?」 「きれいに食べるなーと思って。ちょっとくらいクリームをつけたりするかと思ったのに」 「子供じゃないんだから、そんなのないよ」 「でも、よくマンガとかであるじゃん? 米粒を口の横とかにつけるやつ」 「そんなのつけてる人見たことないよ」 「でも、それだとさ、『クリームついてる』とか言って、こういうのできないでしょ?」 そう言って、太陽は瑠奈に軽いキスをした。 それから、太陽はそのまま動かないでいる瑠奈の頬にそっと手でふれると、もう一度今度は少し長くキスをした。
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