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授業が終わった後、教室に残って、瑠奈は太陽が話し始めるのを待っていた。
最後のひとりが教室を出ると、ようやく太陽が話し始めた。
「お母さんもしかして悪いの?」
「え? どうして?」
「昼、食欲ないみたいだったから。心配なんじゃないかと思って」
「それは、朝たくさん食べて――」
「嘘つき」
瑠奈の胸がズキンと痛む。
「昼に言ってた分、いくらお腹が空いてたからって、吉高が食べれるわけないじゃん。いつも見てるからわかるよ」
「あ……」
「お母さんのこと心配で食べれなかったんでしょ?」
「……うん」
瑠奈の胸はずっと小さく痛み続ける。
「何かできることある?」
「大丈夫。本当に」
「それならいいけど」
「日下部くんの話って何?」
「……こんな時に言う話じゃないかも」
「教えて。聞きたい」
太陽は瑠奈の顔を見たものの、すぐに下を向いてしまった。
「昨日、吉高が学校来なかったの、オレのせいかと思って焦った」
「日下部くんの?」
「オレがあんなことしたから……」
「あんな――」
そこで、瑠奈は太陽が何のことを言おうとしているのか理解して何も言えなくなってしまった。
2人でクレープを食べていた時、太陽がいきなり瑠奈にキスをしたことを言っているのだとわかった。
「いい加減な気持ちじゃないから」
太陽が瑠奈の顔を初めて真っ直ぐに見ると、照れくさそうに言った。
「吉高、オレの彼女になって」
その言葉に、瑠奈が突然泣き出したので、太陽は動揺した。
「ごめん! 嫌だったら嫌って言ってくれていいから! それで友達じゃなくなるとか、そういうの絶対ないから!」
「……違う」
「オレが吉高のこと好きとか、困らせるつもりじゃなかったんだ」
「違うよ」
「じゃあ……何?」
「嬉しい」
そう言って、泣きながらも笑顔を見せた瑠奈に、太陽は安堵の表情を覗かせた。
「マジで?」
「わ、わたしも日下部くんのこと……好き」
「やった!」
太陽が思わず瑠奈を抱きしめると、瑠奈が今度は泣きじゃくった。
それで、太陽はすぐに瑠奈を離すと謝った。
「ごめん! 嬉しくて、つい……いきなりこういうのダメだった」
泣き続ける瑠奈に、太陽は少し困った顔をして、瑠奈の頭を撫でた。
「大切にします」
「わたしも」
「これからも、よろしく」
「よろしくお願いします」
(少しだけでいいから、ほんの少しだけ隣にいさせて)
太陽の嬉しそうな顔を見ながら、瑠奈は思った。
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