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瑠奈は電車の中で大学に入る前のことを思い出した。
奈帆と一緒に受験勉強をしていた頃のこと。
「瑠奈ぁ……ごめん……」
学校が終わって、瑠奈の家に来た奈帆の第一声がそれだった。
「何? 何で奈帆が謝るの?」
「日下部くん……彼女いるみたい」
「そうなんだ」
意外に明るい瑠奈を見て、奈帆は不思議そうな顔をした。
「ショック、だよね?」
「全然」
「でも……」
「わたしは見てるだけしかできないし、わたしの好きな人のこと好きな子がいるのは嬉しい。だって、それってわたしの見る目が正しかった、ってことじゃない?」
「……うん。日下部くん、モテるみたい。彼女いても告る子とかいるみたいだから」
「うわぁすごい」
「そうだ、瑠奈に」
奈帆がスマホを操作すると、瑠奈のスマホに着信音が鳴った。
「集合写真だから小さいけど、試合で勝った後に撮ったやつだって」
奈帆が瑠奈に送ってくれたのは、太陽がサッカー部の全員と一緒に写った写真だった。
「ありがとう。嬉しい」
「今はこんな小さいのしかないけど、一緒の大学に入れたらさ、2人で写真撮れたらいいね」
「これで十分。2人の写真はいらない」
「なんで?」
「いらないの」
「思い出になるよ! 後から見て、あんなとこ行ったねとか、あの時ああだったよねとか」
降りる駅まではもう少し時間がある。
瑠奈はスマホのアルバムを開いた。
大学に入る前、奈帆にもらった写真は元が小さくて、顔がよく見たくてもピンチアウトするとボケてしまう。
それでも、太陽がサッカー部の全員と一緒に写った写真は、ずっと瑠奈の宝物だった。
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