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×月×日
名前を呼ばれた
名前を呼んだ
くさかべたかやすくん
ずっと心の中では呼んでたけど
口に出すのは初めて
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太陽と山里、瑠奈の3人で食堂に行くと、席に着くなり山里がからかってきた。
「2人さぁ、何いきなり付き合っちゃってんの?」
「いいじゃん」
太陽は気にすることもなく、定食についていたお味噌汁を飲んだ。
瑠奈の方は下を向いてずっとパスタをフォークでくるくるしている。
「まぁ、仲がいとは思ってたけどさ。よく一緒に帰ってたもんなー」
「悪い?」
「悪くはない」
「じゃあ、ほっといて」
「ねぇ、吉高さん、こいつ2人きりの時ってどんなやつ?」
「えっ!」
「お前、そういうの聞くのやめろ」
「何で? 知りたいじゃん。吉高さん、どう?」
「えっと……や、優しい」
顔を赤くして答える瑠奈を見て、山里はふてくされた顔をする。
「やっぱもういいや。昼、冷めないうちに食べよー」
「今の感じ悪い」
「吉高さん知ってた? こいつ、吉高さんがいない時に『吉高って可愛いよなー』って、すっげぇうるさかった」
「山里、これ、卵焼きやるから黙って」
「それにさー」
「アジフライもやるから」
「ふんっ」
お昼を食べ終わると、第二外国語の選択が違う山里が2人を置いて先に行ってしまった。
太陽と瑠奈も選択は違うものの、途中まで一緒に歩いた。
「あいつ、『吉高』『吉高』って連呼して……」
「名前だから」
「そうじゃなくて……なんか、他のやつが名前呼ぶのって……」
「何?」
「……特別がいい。だから、瑠奈って呼んでいい? オレだけ特別に」
「あ、うん」
「オレのことは?」
「えっ? えーっと……たかやす……くん」
「呼び捨てでいい。『くん』とかつけられたら恥ずい」
(名前を呼び捨てにするのは恥ずかしくないの?)
瑠奈はそう思いながらも、太陽を下の名前で呼ぶことにふわっと幸せな気持ちになった。
(『特別』……だって)
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