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×月×日
奈帆に相談した
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病院のベッドでからだを起こして、瑠奈は言った。
「困ったなぁ、って思って。太陽のことどんどん好きになっちゃうの」
それを聞いた奈帆は、ようやく瑠奈が「生きたい」と思うようになったのだと喜んだ。
「だったらさ、ほら、心臓移植の意思を伝えようよ。瑠奈は『心臓移植をしない。誰かの死を待って生きるのは嫌』ってずっと言ってたけど、移植ができたら大丈夫なんでしょ?」
「心臓移植の待機期間は平均5年以上だよ? すっごく運が良くて移植できたとしても、拒絶反応とか薬の副作用とかいろんな問題で、移植して3ヶ月以内に亡くなる確率は13~15%」
「え……」
「わたし、いろんな数値が悪くなりすぎて、もう、待ってる時間がない」
「やだ。やだやだやだ。嫌だよ、瑠奈、何か方法あるよね? ねぇ、先生に相談しよう?」
「ごめんね、奈帆」
「どっか、海外とかすっごい偉い人とかならなんとかなるんじゃないの?」
「ずっと、わかってたことだから。いつかはこうなるって。だから誰とも仲良くなるのはやめようって思ってたのに。ごめんね、奈帆。友達なんかになっちゃって」
「やめてよ。友達になりたかったのはわたしの方なんだから」
「……わたしが死んだら、太陽の心の中にも残ってしまう」
「なんで? ダメなの?」
「そんな悲しい思い出を引きずっていて欲しくない。わたしのことなんか早く忘れて幸せになって欲しい」
「そんなこと言わないでよ」
「あの時もっとああすれば良かったとか、あの時どうしてあんなこと言ったんだろうとか、何度も何度も後悔させてしまう」
「瑠奈……」
「今だって、奈帆のこと泣かせてる」
「わ、わたしは後悔なんかしないからね! ずっとずっと楽しかったから。わたしの方から瑠奈と友達になったんだし。だから、日下部くんだって瑠奈と会えたこと後悔なんかするわけない」
「どうしよう……見ていただけの時より、もっと太陽が好き」
泣き続ける瑠奈の手を、奈帆も泣きながら握った。
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