待ち合わせ

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ちょうど1週間前だった。 大学の講義の空き時間にふたりで見ていた動画に、途中映画の番宣が入った。 それを見た瑠奈の方が言った。 「この映画、観たいな」 「来週から公開みたいだから行く?」 「行きたい!」 太陽がすぐにスマホでチケットを購入するのを、瑠奈は覗き込むようにして見ていた。 「土曜日、2時に駅前で待ち合わせしよう。遅れるなよ?」 「遅れないよ。来週が楽しみ」 瑠奈は嬉しそうな顔をしていた。 「見たいって言ってたじゃん……」 太陽は無意識に言葉にしていた。 「日下部くん、誰と話してるの?」 振り向くと、太陽と同じ大学の井坂奈帆が立っていた。 「井坂か」 「もしかして吉高さんと待ち合わせしてた?」 「なんで?」 「さっき見かけたから」 「どこで?」 「駅ビルの中のLILIっていうアクセサリーのお店だけど。また約束すっぽかされた?」 「一応ここまでは来たけど、帰ってった」 「いい加減、別れたら?」 「それは考えてない」 「……他にもっといい子いると思うけど?」 「かもなぁ」 太陽の脳裏に、あの夜の瑠奈の顔が浮かぶ。 泣きながら「太陽、好きだよ……」と言った時の顔。 「井坂、暇?」 「え? うん」 「映画行く? 3時からだからもう始まってるけど」 「えっと……」 「ID教えてくれたらQRコード送る」 「一緒に行くんじゃなくて?」 「一緒は……これでも彼女持ちだから。井坂にも悪いし」 「……行かない」 「そっか。じゃあ、オレ帰るから。また大学で」 奈帆は太陽の姿が見えなくなるまで待って、カバンからスマホを取り出すと電話をかけた。 「日下部くんに会ったんだけど……どんだけ彼女好きなの?って感じ……てっきり『映画一緒に行く?』 とか言って来るかと思ったのに、わたし一人で行けってさ……別れるつもりなんて全然なさそう……もちろん、諦めたりしないよ」 奈帆は通話を終了すると、スマホを見つめたままため息をついた。
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