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「急に『別れたい』なんて言ったら理由を聞かれるよね。そうしたらどうしよう?」
「何で? 何で別れなきゃいけないの?」
奈帆には瑠奈の言うことが理解できなかった。
ついさっき「太陽が好き」と瑠奈は言ったばかりなのに、好きならどうして別れる必要があるのだろうか?
「何で? 何でそういう発想になっちゃうの?」
瑠奈は真剣な顔を奈帆に向けた。
「太陽が好きだから、泣いてほしくない」
奈帆は長く瑠奈と一緒にいる。
だから、瑠奈が決めたことを、どうやっても変えられないことを知っていた。
「どうしたら……他に好きな人が出来たって言うとか?」
「そうだね……それがいいよね……」
「社会人の、すっごいお金持ちってことにして、日下部くんが絶対に敵わない相手だってわかれば……」
「うん……」
瑠奈から涙が溢れるのを見て、奈帆は焦った。
「泣かないで。やっぱり、こんなのやめようよ、正直に話そう?」
「それはだめ」
太陽に聞かれた時のために、瑠奈の架空の好きな人をどんな設定にするのか話し合った。
奈帆がさりげなく太陽に告げ口するために、奈帆も知っておかなければいけない。
ちょうど、2人が見ていたドラマに、ハイスぺでモテモテな役の登場人物がいたので、その人を当てはめることにした。
ドラマの中でその男性の職業はパイロットだったけれど、それはさすがに突飛な気がした。
奈帆は、姉の会社が証券会社だったので、架空の相手の職業を証券マンということにしようと提案した。
その計画をいよいよ実行しようとした前日、思いもよらないことが起きた。
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