瑠奈の日記

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奈帆が家に帰ると、彼氏とデートだと言っていた姉の奈津佳が既に家にいて、部屋から出てこない。 夕飯の時間になっても2階の自分の部屋から出てこないので、心配になって、奈帆は部屋のドアをノックした。 「ご飯食べないの?」 「いらない」 「彼氏とケンカでもした?」 返事がない。 「お姉ちゃん?」 しばらく待っても何の返事もないので、奈帆が自分の部屋に行きかけた時、ドアが開いた。 「お母さんには内緒で氷と水と鎮痛剤持って来て」 目を真っ赤にはらした奈津佳を見て、奈帆は急いで言われたものを取りに行った。 戻って来た奈帆を奈津佳は部屋に入れてくれた。 部屋の中を見て奈帆は驚いた。 ローテーブルの上に大量のお酒の空き缶が置いてある。 「これ、全部飲んだの?」 「うん。大きい声出さないで。飲みすぎて頭が痛い」 「目が腫れてる」 「わかってる」 奈津佳は奈帆の持って来た薬を飲むと、氷をタオルに包んで目に当てた。 「どうしたの?」 「…‥‥フラれた」 「え? 彼氏に?」 「大きい声出さないで」 「ごめん。でも何で?」 「他に好きな子ができたって言われた」 「そんな……」 「相手、大学生だよ? ミスなんとかっていうのにも選ばれた綺麗な子で、ファミリーレストランチェーン店の一人娘だって」 「何でそんなこと知ってるの?」 「仕事で父親の方と取引があって、その関係で娘の方とも知り合ったって話を聞いてたから。その時は『すごい綺麗な子なんだ』って聞いても、ふうんって思っただけで、まさかこんなことになるなんて想像もしてなかった」 「どうするの?」 「どうにもできない……こんなの嫌だ……」 奈津佳が泣き始めたので、どうしたらいいのかわからず、奈帆はおろおろした。 「またすぐにいい人見つかるよ」 「無理だよ……すごく好きなんだもん……きっともう誰も好きになんかなれない……」 「お姉ちゃん、泣かないで……」 「こんなの一生忘れられない……」 奈津佳の言葉が奈帆の胸にささった。 (わたしと瑠奈の計画、間違ってる?) 誰のことも好きにならないように生きてきた瑠奈が、誰かを好きになったのは太陽が初めてだった。 奈帆もそんなに恋愛経験がない。 高校の時初めて付き合った相手とは、好きで付き合ったものの、お互い付き合ってみるとなんだかうまくいかず、自然消滅してしまった。 別れた相手を思ってぼろぼろになって泣く奈津佳を見ていると、これからやろうとしていることが大きな間違いのように思えた。 そもそも全てが間違いであることはわかっていたけれど、瑠奈とたてた計画はだめだと思った。 奈帆は次の日すぐに、瑠奈の入院する病院に行った。
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