44人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
奈帆と瑠奈はどうしたら相手を傷つけずに別れを決意させられるのかを考えた。
けれども、そんなことを考えながらも、奈帆は何度も瑠奈に言った。
「やっぱり、こんなのやめない? 正直に言おう?」
「奈帆、ありがとう。後はわたしひとりでなんとかするからいいよ」
「だめ! ちゃんと最後まで付き合うから」
「奈帆には迷惑かけてばっかりだね」
「バカなこと言わないで。2人でいい方法を考えよう、ね?」
「……うん」
それでも、結局どうしたらいいのかわからないまま、奈帆は瑠奈と別れて家に帰った。
奈帆が家に帰ると、母親から「奈津佳が部屋に閉じこもって出てこないから夕飯を持って行ってあげて。どうせ彼氏にフラれたんでしょう」と言われた。
母親のするどい指摘にどきっとしながら、奈帆は奈津佳の部屋に夕飯を持って行った。
奈帆が夕食を部屋まで持って行くと、奈津佳はドアを開けてくれた。
「お母さんにバレてたよ」
「あの人、こーゆーこと鋭いんだよね。だから部屋にひきこもってたのに」
「意味なかったね」
「入って」
奈帆が部屋に入ると、昨日、ローテーブルの上に置かれていた大量のお酒の缶は片づけられていて、ビニールに入れて部屋の隅に置かれていた。
「大丈夫? 目の下にクマが出来てるよ?」
「夜、寝ようとしても、いろんなこと思い出しちゃって、眠れなくなるんだよね。何かしてる時はいいんだけど、ふとした瞬間に楽しかった思い出とフラれた時に言われた言葉が交互に思い出されて」
「好きだったんだね」
「うん」
奈帆の頭に瑠奈と太陽のことがよぎった。
「どんな別れ方だったら、相手のことすぐに忘れられてた?」
「……ずっと前に別れたやつのことは早々に忘れたよ」
「どうして?」
「うーん。一言でいえば、ムカついてこっちからフッたから」
「何にムカついたの?」
「え? ああ……約束はドタキャンされたし、時間にもルーズ。おまけにわたし以外の女とも影で遊んでるのを友達から聞いて」
「どうしてそんな人と付き合ったの?」
「最初は、優しかったし、マメで一途で、大切にされてたから。いつからか態度が変わっちゃって。別れてすっきりした」
「そうなんだ」
「ムカついてフッた分には何の未練も残らないってことだよね。でも好きなのにフラれたやつは……」
奈津佳が突然泣き出したので、奈帆はぎょっとして近くにあったティッシュの箱を差し出した。
泣きじゃくるの奈津佳を見ながら、奈帆は考えていた。
(日下部くんの方から瑠奈をフッたら未練は残らない……)
最初のコメントを投稿しよう!