瑠奈の日記

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********************* ×月×日 「こんな態度が彼氏に嫌われる」という特集の雑誌を買った 嫌われるようなことを太陽に言った せっかく太陽がわたしのためにしてくれたことを台無しにした 書かれたことを全部やっているのに、太陽は怒らない 太陽に酷いことをしていると思うと苦しい 嘘ばかり 太陽に好きって伝えたい ********************* ×月×日 20歳までは生きられないと言われてきた いろんなことをあきらめてきた 心臓移植をするつもりはなかった 自分が生きるために誰かの死を待つのは嫌 でも 生きたい そう思うようになってしまった 太陽の隣を歩いていたい 移植を希望する意思を先生に伝えた 奇跡なんて起こらない わかってる それでも、緊急連絡用にもう一つスマホを契約した ********************* ×月×日 大学で倒れた 太陽の前で 夜、お母さんに「話をしよう」と言われた 大学を自主退学する話だった 思っていたよりタイムリミットが早かった わかってる 今まで自由にさせてくれてありがとう 何も言わないでいてくれてありがとう お母さんが泣いた 大切な人を残して逝ってしまうのと、後に残されてしまうのと、どっちが辛いんだろう? その答えを知ってる 太陽ともっと一緒にいたかった ********************* 夕食を終えた後、瑠奈の母親がまじめな顔をして言った。 「もう無理って自分でもわかってるよね? 明日、退学届を出そう」 「うん」 「太陽くんには本当に言わないの?」 「言わない」 瑠奈は太陽と付き合っていることを母親に話していた。 自分が無理をしても大学に行きたいことを説明する時に、「一度だけ恋をしたい」とお願いした。 母親はそれを承諾した。 瑠奈が付き合い始めたことを告げた時、反対をされなかった。 瑠奈が太陽の家に泊ることについても何も言わなかった。 母親が言ったことはただひとつだけ。 『絶対に太陽くんの前で倒れたらだめ。彼を苦しめることになるからね』 それだけだった。 「……お母さんね、瑠奈のことが大事で、瑠奈の幸せな顔を見たくて、瑠奈がいなくなった後、太陽くんがどんな思いをするか、わかっててずっと無視してきちゃった。太陽くんに悪いことしてるってわかってて何も言わないできた」 「悪いのはわたしだから」 「もう太陽くんに会うのはやめなさい」 「わかってる。全部終わりにする」 「……ごめんね、元気な体で産んであげられなくて。太陽くんにも謝らないといけない……」 目の前で泣く母親を見ながら、瑠奈は思った。 (ずるいのはわたし。太陽を傷つけることがわかってて、自分の気持ちを優先させたんだから)
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