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授業が終わり、帰ろうとしたところで、太陽はまた奈帆につかまった。
「吉高さん、今日学校休んだのは、デートしてるからだと思うよ」
「またその話?」
「聞いたから。社会人のいい人がいるって話してるのを」
「いつ誰と話してた?」
「それは……」
「井坂、一体何がしたいの?」
「今日だってその人と会ってるはず」
「そいつ仕事何やってんの?」
「証券会社に勤めてるって聞いた」
「今日、平日だけど会社は?」
「ゆ、有給休暇」
太陽が無視して行こうとした時、奈帆が言った。
「スマホの電源、切ってるはず。いつもその人と会う時は日下部くんから電話あったら困るから、電源切ってるって聞いた」
スマホのことを言われて、太陽は立ち止まった。
「誰からそういう話聞いてるのか教えてくれたら、少しは信じてもいいけど?」
「あ……えっと……あの……お、お姉ちゃん」
「瑠奈の相手は、井坂の姉さんと同じ会社のやつってこと?」
「……そう」
「わかった」
「ほ、本当にわかってくれた?」
太陽は最後の言葉を無視して、少し歩いたものの、振り返って言った。
「それで、オレが瑠奈と別れたら、井坂が彼女になってくれる?」
「えっ!」
「どうなの?」
「ありえない!」
奈帆は太陽を残して走っていってしまった。
「やっぱり、わけわかんないんだけど? 井坂の目的って何?」
太陽は奈帆の後姿が見えなくなるまで、その場に立っていた。
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