♯21 思いよ、届け!

1/1
前へ
/190ページ
次へ

♯21 思いよ、届け!

 そのとき折しも。  ポータルが現れて。  鈴鹿が学校から戻ってきた。  空間ごと氷づけになっているタモちゃんたちを目の当たりにして。 「ジュテームさん、遅くなりましたっ。って、ひええーーーーーっ!」  にわかに色を失い。  大慌てで灼熱の神通力を詠唱する! 「燎原(りょうげん)白熱(はくねつ)間欠熱(かんけつねつ)肢体(したい)()びよ、焦熱招来(しょうねつしょうらい)!」  タモちゃんたちの体が熱した鉄のように輝きだした。  体から噴き出る高温に、氷が一気に気化して――。  ついには派手に破裂する! 「タモちゃんっ、ジュテームさんっ、それに誰っ、エターニャさんがなんでっ? みなさん、大丈夫ですかっ?」  鈴鹿がオロオロ寄ってきたのを、タモちゃんは制止して。 「来るな! この力を利用する!」 「あらあら、やるじゃないの。今度はあなたが告白して見せて? わたしの心を掴みたいなら、見惚れるような本気を出してごらんなさい!」  デッドリィが氷の防壁を張り巡らせていくなか。 「デッドリィ! おまえにあたしの思いを撃ち込んでやる! 受け止めてみろ!」  冷気の残る大気や大地に念を撃ち込むと。 「妖力フリーイング!」  タモちゃんの髪の毛が絶対零度に染め上がっていく――。 「()てつき()まれ! 雪嵐吹雪(せつらんふぶき)よ! 懸氷鉾(けんぴょうぼう)白虎(ビャッコ)殺氷弾(さっぴょうだん)!」  突如降り始めた土砂降りの雨粒が、大地に触れる間もなくすべてが凍り付き。  氷雪と変化した途端!  激甚な猛吹雪がタモちゃんたちを取り巻いて、雪あらしの竜巻から大白虎が呼び起こされた!  デッドリィを睨み据え、猛々しく咆哮を上げるや否や。  虎口から巨大なつららがぶっぱなされる!  つららは氷壁を打ち破り。  デッドリィの胸に直撃!  その衝撃で数多の屍人形が吹き飛ばされていく。  氷霧が裂いたように晴れ。  デッドリィも消し飛んだかと思われたのた。  のだが! 「氷のマジカリストを氷で打ち負かそうだなんて……、なんて小憎らしい子……」  片膝をつきそうになりながら、デッドリィは立っていた!  すぐさまジュテームとエターニャが、追い打ちを仕掛けようとした、それを遮って! 「でも、そこがトキメキよねーーーっ。キュン、キュン、キュ~~~~ンッ!」  胸を押さえてデッドリィが大絶叫! 「あなたの痛み(おもい)、突き刺さったわああっ!」  デッドリィがタモちゃんに飛びついて。  愛情深~くキスをする。 「ひ~~っ、なに考えてんだ、おまえっ!」 「力尽くで認めさせてやるって言ったじゃない! そういうの大好物なの! 今日からわたしはあなたの恋のお人形よ! ちゅばばばばっ」 「認めさせるって、そういう意味じゃなぁああい! ひゃ、ひゃめれ~~~っ!」  タモちゃんがマシンガン・キスから逃れようと暴れるが。  エターニャとジュテームと鈴鹿の三人は。 「タモちゃんってば、デッドリィに百合を強要させたかったんだな!」 「百合というより、ありゃもはや、18禁じゃね?」 「タモちゃん、やらし!」 「そういう意味じゃないって言ってるのにっ! たしゅけてぇーーっ! にゃはーーーーーっ」  タモちゃんが救いの腕を伸ばしているのを。  それはそれはニヤついた目で、意地悪く見守ってあげるのだった。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加