♯17 無尽蔵の魔力

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♯17 無尽蔵の魔力

「エターニャさまを倒したときと、同じような魔法で倒そうだなんて、私を舐めないでよね。言ったでしょ。私はエディモウィッチさまの体の一部(いちぶ)なんだって!」  黒煙が晴れて。  何ごとでも無かったと、アピールするように両腕を広げて、ショートヘアの少女が現われる。  ひび割れた丸メガネを煤で真っ黒に曇らせながら。  足を引きずり。  瘦せ我慢の作り笑顔で震えながらピースする。 「こ、こんなの、超絶、へーきだしっ!」 「いやいや、ズッタズタになっちゃってるけどっ?」  タモちゃんがツッコミを入れると。  傀儡はニヤッと笑って。  その場でくるりと翻った。  するとそこには真新しいメガネ少女が! 「ウソだよー!」  傀儡がぺろんと舌を出す。 「そんなっ……、あたしの至極が傷ひとつつけられないなんて」  タモちゃんの目に涙がこみ上がってきた。  タモちゃんは腕で拭って。  ――やばい。精神が幼くなり始めてる! 「救世主も泣くんだ。そんなに悔しかったぁ?」  傀儡がニタニタ笑いながら舞い降りてくる。 「精神チャージ!」  タモちゃんは逃げ出した。 「尻尾を巻いてどこへいく?」  傀儡がゆらゆら追いかけてくる。  ――時間を稼がなきゃ!  火を放つ岩が(ひょう)のようにタモちゃんめがけて次々に落ちてくる。  もてあそんでいるかのように。  追い立てているかのように。  わざと体からずらして地面に落ちては、きらびやかに燃え上がる。  ――あいつ、出会ったときからずっとあの魔法を。どれだけ魔力が残っているのよ!  タモちゃんは火の雨から逃れるために、教会の中へと逃げ込んだ。  頑丈な石材で建てられたロマネスク様式の教会は、火災や天災にはめっぽう強いが、果たしてどれだけ耐えられるだろう。  屋内には幸い誰もいなかった。  美しい彫刻が施された柱の回廊を走り抜けて。  礼拝堂へ駆け込むと。  チョロチョロと水が流れる音が聞こえた。  礼拝堂の中央に噴水のようなものがある。  そこから水が湧き出ているようだ。 「いまさら神頼み? そんなところに隠れたって無意味よ。どうしてって? いま教えてあげる」  傀儡の声が直接タモちゃんの脳内にとどろいた途端。  百雷が一瞬(いっしゅん)にして落ちてきたのかと、目を疑うほどのヒビが礼拝堂の壁にザザッと走った。  その直後! 「崩れるっ」  タモちゃんが回廊へ飛び出したと同時に。  礼拝堂が崩壊して噴煙を巻き散らかした。 「ここをタモちゃんの墓場にしましょ。教会だから丁度いいじゃない」  タモちゃんの目の前に、傀儡がゆっくりと降りてくる。
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