♯21 ボクたちの最高

1/1
前へ
/200ページ
次へ

♯21 ボクたちの最高

「これで最期(おわり)にしてあげて!」  デッドリィが涙ぐむなか。  半と鈴鹿は頷き合って。 「魔忍法(まにんぽう)堅守(けんしゅ)がた()りの(じゅつ)!」  半が傀儡に被害甚大の魔忍法を詠唱し。 「底上(そこあ)逓増(ていぞう)()()ばせ、下駄(げた)()かせろ、増幅(ぞうふく)招来(しょうらい)!」  鈴鹿が威力増大の神通力を唱えた、そこへ! 「妖力フリーイング!」  タモちゃんの髪の毛が、光輪(ニンブス)に染め上がっていく――。 「エターニャ!」 「全力魔法で行く!」  タモちゃんとエターニャは手を取り合い。 「円光(えんこう)燦然(さんぜん)! (とら)われの(しば)りを()(くず)せ!」 「ウィオ・ロ・キレーキ・エビ・ヒルアミ!」  至高の術を唱え合う! 「ヅメンシテルーテ・ゾ・シテレングシテ・モザコリ・ポワッ!」 「火炎羽衣(かえんはごろも)一角獣(いっかくじゅう)爆砕(ばくさい)大聖撃(だいせいげき)!」  幾重にも重なる光の輪のなか。  額に角を有した銀白のユニコーンが現われた!  たてがみや蹄、鋭い角に火炎の魔力を宿らせると。  前足を蹴上げて、気高くいななき。  聖なる光輝を放ちながら。  傀儡の体を刹那の速さで()き抜けた!  そして大爆裂!  世界が白い光に塗りつぶされ。  傀儡の断末魔が大気を穿つ――。  須臾にして、天地に色彩が戻ってきたころ。  タモちゃんたちの目の前から――、傀儡は姿を消していた。 「傀儡……」  タモちゃんが悲しげに言葉を漏らす。 「消滅したのか……?」  エターニャは片膝をついた。 「ボクたちの最高をくらったんです」 「魔力は……もう感じられません」  鈴鹿と半がしんみりと事実を告げる。 「クグツッ、やっと自由になれたねっ……!」  デッドリィは涙を拭って笑顔を作った。  タモちゃんたちは支え合って。  大地を踏みしめる。 「お前ら……、帰っぞ。帰る家があればだけどな」  ジュテームが皆の背中を押して歩き出したとき。  なにかちんまりしたものが目の前を通り過ぎた。 「わっ、でっかい蚊だっ」  タモちゃんが叩き潰そうと身構えるや否や。 「マッテ! マッテーーッ!」  小さな声が聞こえてきた。  みなが眉を寄せて。  目を凝らした先に……。 「傀儡かーーーっ?」  蚊ほどに小さくなった傀儡が飛んでいた!
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加