♯2 自分だけの秘密裏

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♯2 自分だけの秘密裏

「妖術を使うのに、命を削れってことっ? そんなの滅茶苦茶よ!」  タモちゃんが激高するが。 「本当は精神年齢も減るし、寿命も減っていくようにしてたんだけどー」  創造主がなおさら信じがたいことを打ち明けてきたので。 「してた? って、どういうこと!」  タモちゃんが問い責めると。 「実装したのは(はん)ちゃんと戦ってたころくらいからかな」 「なんで? 不利になるようなことばっかりするのよ!」 「ごめんね。創造主にもいろいろと事情があってさ。減るのが寿命だけになっただけでも良かったと思ってほしいんだ」  創造主は申し訳なさそうにうつむいた。 「さてはあたしにエディモウィッチと相打ちにさせるつもりだな!」 「タモちゃんは大妖怪だったからね。すぐに命は尽きないよ。けれど……、大人にはなれないかな。たぶん」 「あたしがエディモウィッチを倒すのを放棄して、妖術を一切使わなかったら?」 「そういうわけにはいかないよ。どうしても使わなくちゃいけない場面に遭遇するから。タモちゃんは自分ひとり生きていければいいって思うような性格じゃないでしょ?」  すべてがお見通しだと、言わんばかりの言葉の重たい圧力が、タモちゃんの刃向かう気迫を押し黙らせた。 「あなたって、卑怯だわ」 「仲間のみんなにはこちらから言っておこうか?」 「その必要はない」 「なら、みんなには黙っといてあげる。タモちゃんが自分の口で言いたくなったときに言うといいよ」 「…………」 「話はこれで終わり。メンテナンスフィールドを閉じるね。元気でね、タモちゃん」  創造主がカーテンを閉めるような動作をすると。  タモちゃんは急速に意識を奪われた。  炎の岩の大雨で破壊し尽くされた町。  タモちゃんたちがレジスタンス支部にしていた町は。  ほとんどが燃え尽きて、壊れて果ててしまっている。  そんな朽ち葉色の町並みを。  大きなミニトマトほどの背丈のクライネが、エターニャのツインテールに捕まりながら、一望できる高さまでにまで上昇したのち。 「行くよ! 復元阻止解除!」  クライネの発語と同時に、体が強く輝きだした。  温かみのある白い光が放たれ。  吹き下ろしの風のように、町の隅々まで行き渡ると。  ビードロのようにコーティングされていた魔法が浮かび上がって――。  破砕が始まった。  そこへエターニャが復元魔法を唱えれば。 「ルシテオ!」  砕け散った窓ガラスも。  粉々に破壊された石造りの教会も。  崩壊した破片が集まり。  元の姿へと町がみるみる復元されてゆく。  それはまるで波紋が広がる水面(みなも)の花が、咲きこぼれていくかのようだ。
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