♯3 立つ鳥跡を濁さずを着々と

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♯3 立つ鳥跡を濁さずを着々と

 エターニャの強力な復元魔法でも、亡くなられた人の命までは復元できないが。  実はデッドリィには特別な力があった。 「どの遺体も状態が良くないけれど、大丈夫?」  タモちゃんが鼻を押さえた鼻声で言う。  広場に並べられた遺体はすでに腐敗が始まっているようだ。 「灰になってなければ問題ないわ!」  デッドリィはお団子頭をうつむけて、しばらく祈りを捧げたのちに。 「オトサネ・エナンギェイナ・ノーオル!」  屍人形(しかばねにんぎょう)になる呪文を唱えた途端に!  死体の肌が見る見るうちに潤いを取り戻して、精気あふれる人肌に修復されていく。  かつて見た、チャコールグレーの肌に蛍光イエローの服で着飾る屍人形が。  むっくりと起き上がった。 「おお!」 「メイ・エコウラ!」  そしてすぐさま、屍人形を解く呪文を唱えれば。  一瞬にして。  みなが正常な人間に蘇ってしまった。  ワアーッと。  家族と思しき人たちが抱き合う群衆であふれかえって。  その場が歓喜の声でいっぱいになった。 「どう? タモちゃん、すごいでしょ!」  デッドリィの自慢に満ちた顔の歯が光る。 「これって間接的にだけど、蘇生魔法と同じよね! デッドリィって、本当に変なネクロマンサーね!」  感動したタモちゃんがデッドリィの太ももに抱きつくと。  デッドリィは声が裏返るほどに狂喜して。 「失禁してもよかですかっっ?」 「ヤメロ!」  タモちゃんに飛び退かれるほどドン引きされてしまったのであった。  町も人も復元されていく、その時を同じくして。  鈴鹿(すずか)と半は荷物をまとめる作業をこなしていた。 「これで、最後っと!」  本の束を紐でくくって。  勉強机の上に並べて置いて。  窓から入るそよ風に、鈴鹿はお下げ髪を揺らして息をつく。 「みんな荷物が少なくて楽でしたね! 鈴鹿さん以外は!」  半も鈴鹿の本を縛り終えて。  ポニーテールを振りほどいた。 「あとはお店の後片付けだけですね!」  火照った頬に風が当たって気持ちいい。 「ひと息ついたら、ジュテームさんの手伝いに行きましょうか」 「はい!」
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