♯5 新居!!

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♯5 新居!!

 ここはウーグ海。  私たちの住む地球で例えるところのエーゲ海にある、とある無人島に。  お酒に合う特別なケーキを出す、大人のケーキ屋さんがあった。  リゾート地で見かけるような、美術館を思わせるモダンな造りの建造物で。  一階は飲食のできる席のある、ガラス張りの店舗になっており。  二階が居住スペースになっていた。  澄み渡ったセルリアンブルーの青空に。  透明度抜群なマリンブルーの大海が、目の前に広がっている。  朝の気温は25度くらいで。  カラリとした心地の良い風が、真っ白なプライベートビーチを通って。  木立の合間をすーっと吹き抜けてゆく。  チェックのワンピと姫カットの長い髪がふわりと揺れるなか。  その爽やかな朝の空気を吸い込みながら。  タモちゃんは鼻歌交じりで、掃き掃除を始めた。  そこへバーテンダーの姿をしたジュテームが、自動ドアを開けて店から出てきた。  ジュテームはひとつ深呼吸をしたのちに。 「お嬢は今日も元気だな!」  ガハハと笑う。 「こんな素敵な場所、どうやって見つけたの!」  タモちゃんはにっこり笑った。  店から少し歩くと砂浜があって。  そこから聞こえてくる穏やかな波音が、タモちゃんのお気に入りだ。  ジュテームは得意げな顔になり。 「レジスタンスのメンバーに個人所有の無人島を持っている大金持ちがいてよ。その人の別荘を提供してもらえることになったのさ。ここなら居場所がバレても、民間人を巻き込むこたぁねえ!」  親指を突き上げる。 「それは幸運だけど、こんな場所にお客さんなんて来る?」  タモちゃんが笑いながら眉をひそめると。 「まぁ来ねえだろうな!」  ジュテームは伸びをして、まるで人ごとのように笑い飛ばした。 「生活費、だいじょうぶ?」 「心配すんな! 軍の基地内にあるフードコートに店を構えることになってなあ。そこに繋がるポータルが開通すりゃあ、鈴鹿に頼まなくっても自由に行き来できるようになる。解放日には一般人のお客も来るし、なんとかなるだろ!」 「それって固定のポータルよね? 国家元首クラスの人しか使っちゃいけない最高魔法って聞いたわよ?」  タモちゃんが懸念を抱くのを。  待ってましたと言わんばかりに。 「おうよ! 俺たちには貸しがある国のトップがいただろ? 口を利いてくれたのさ。学校にも繋げてくれるそうだから、自由に通学だってできるぜ?」  ジュテームが鼻を高くする。  タモちゃんは口をすぼめて。 「学校かぁ。どうしても行かなきゃだめ?」  甘えるように抗ってみせるが。  ジュテームは腕を組んで。 「以前町中に住んでたころは世間の目ってもんがあってよ。ひとりくらい不登校でも問題ねえが、子供が4人も5人もずっと家に籠もっていたら、いろいろ人目についちまうだろ」  タモちゃんに諭してみせた。  だけれども? 「無人島(ここ)なら気にすることないんじゃない?」  タモちゃんが的を射ることを言ってきたものだから。  ジュテームは吹きだしたのちに。 「それな! もう授業料、払っちまったんだわ。1度だけでも行ってみてくれねえか。俺は学校ってもんに行ったことがねえ。だから嫌な思いしかしねえなら、やめちまってもいいからよ」  なんとなく、しょんぼりと言うので。 「しょうがないなあ。みんなも行くなら行ってあげる! 授業料の元を取ってくる!」  タモちゃんはジュテームの背中を優しく叩いてあげたのだった。
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