♯9 まだ出番じゃありません!

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♯9 まだ出番じゃありません!

 半は耳に手をあてて。 「反響しているだけでしょうか?」  クライネが奥を覗き込むが。 「これは……、複数の声が聞こえるネ!」  真っ暗がりで見通せない。 「ロアテ!」  エターニャが魔法で明かりを灯しても。 「先の方はよく見えないな」 「行ってみるしかなさそうね」  タモちゃんたちは洞窟内を慎重に進むことにした。  注意深く声を聞いていると。  悲鳴と言うより、楽しげにはしゃいでいるような声にも聞こえる。  洞窟の奥へと歩いて行くと、次第に明かりが見えてきた。  両側には岩壁がそそり立っているが、天井が開けていて、光が入ってとても明るい。  そこは小さな入り江になっていて。  こぢんまりとしたビーチがあり。  そのほとりに別荘が建っている。 「なにここ。まるでヒーローの隠れ家みたい!」  デッドリィたちが岩陰からこっそりとビーチを覗き見ると。  中高生くらいの女子が四人、水着姿でビーチバレーを楽しんでいて。  その傍らで。 「遊んでないで手伝ってよー!」  などとじゃれ合いながら、ふたりの女子がバーベキューの準備をしている。 「ここって個人所有の無人島よね?」 「だれよ? あの子たち!」 「ボク、文句言ってきます!」  鈴鹿はタモちゃんとデッドリィを制止して、ひとりビーチに飛び出した! 「あなたたち!」  鈴鹿の開口一番、謎の女子たちが凍りつく。 「ここは個人所有の島ですよ!」  その勇気に触発されて。 「そうよ! 許可無く入っちゃダメなんだからね!」  デッドリィたちも飛び出した。  突然の注意を受けた正体不明の女子たちが、硬直したまま目を見開く。  すると、一団のなかからタモちゃんを見つけたようで。 「おっ、おまえっ、タモちゃんかっ?」  ザザアッとたじろいだ。 「なぜあたしを知っている? おまえら、まさか!」  タモちゃんが身構えると。  正体不明の女子たちが。 「わー! わー! この子たちにモザイクかけて! この子たちはまだ見ぬ強敵たちよーーっ!」  顔を手で覆い隠して慌てふためきだしたのだった。 「いや、もう見ちゃったよぉーーっ?」
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