♯10 乙女の戯れ

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♯10 乙女の戯れ

「タモちゃん、見なかったことにして! せめて読者には内緒!」  正体不明の女子たちが、口に人差し指を押し当てる。 「おまえら、エディモウィッチの手先だな!」 「ぐぬぬ、まさかここがタモちゃんたちの縄張りだったとは!」 「ここで何をしている!」  正体不明の女子たちは代表のひとりを除いて、魔法で自らモザイクをかけたのち。  低姿勢からコロリと態度を変えて。 「はっはっは! あたしはマジカリストのロナ! おまえらをコテンパンにしてやろうと思ってな! 来るのを待っていたのさ!」  全員でふんぞり返った。  ロナは青い耳飾りをしたショートヘアの女子で。  水色と白のしましまの、三角ビキニを身につけている。  だがそのとき。  バーベキューコンロで焼き始めていた具材(ウインナー)がポンッと爆ぜて。  みんなの目がそこへ集まった!  辺りには焼けた肉の香ばしい匂いが充満している。 「ウソばっかり! 遊ぶ気満々だったじゃない!」 「タモちゃん聞いて! それ水素コンロなの! 二酸化炭素を出さない上に、超美味しく焼けるんだ! お高いんだよぉ? せっかくだから一緒に食べないっ?」  ロナが焼けたウインナーをフォークで突き刺し、カリッと頬張る。 「おいしそう……」  クライネが涎を垂らしてふらっと近づこうとしたのを。 「騙されちゃダメです!」  半が腕を引き止めた。 「マジカリストと知ったからには、馴れ合うつもりなど一切ない!」  タモちゃんがキッと睨みつけると。  ロナたちは態度をなよなよさせて。 「そう恐い顔をしないでよ。本音を言うと、今は休暇中でマジなバトルはしたくないんだ。どうだろう? ゲームをして負けた方がこの島から出て行くっていうのは?」 「勝手なこと言うな!」 「その代わり、タモちゃんたちが勝ったら、この忘却のポーションを飲んで、エディモウィッチさまにはこの場所のことを秘密にするからさ!」  ロナが紫がかったグリーンのポーションをちらちら見せる。  タモちゃんたちは輪になった。 「どうするの?」と、クライネ。 「相手は6人。全員でかかってこられたら面倒ですよ」と、半。 「ジュテームさんもいませんしね」と、鈴鹿。 「あいつら強いの?」と、タモちゃん。 「どいつも見ない顔だ」と、エターニャ。 「新顔と思うけど、マジカリストを名乗るのを許されてるからには、それ相応の実力があるはずよ」と、デッドリィ。  ――穏便に済ませられれば、妖術を使わなくても済むかもしれない。  タモちゃんたちはロナたちに振り向き直った。 「いいわ! ゲームって言ったわね? なにをしようって言うの!」
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