♯3 青春をぶちかませ!

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♯3 青春をぶちかませ!

「おいしそう!」  クライネが匂いに肩をふるわせる。 「これウナギじゃないのっ!」  タモちゃんは喜びよりも、代価が心配になって、怒った口調でつぶやいた。 「間違いなくうな重ですっ!」  半が幻でも見ているのではないかと目を疑って。 「これが高級和食のひとつとされる、かの、うな重か!」  エターニャが瞳に星を宿らせた。 「なんでっ? どしてっ?」 「まさか最後の晩餐じゃないですよねっ? このあと無理心中とかやめてくださいよっ!」  デッドリィと鈴鹿は嬉しさのあまり抱き合うが、明日の我が身に不安を感じた。 「ちぃと臨時収入があってな! 安心して食っていいぜ!」  ジュテームがGOサインを出すや否や。  みな、わあっと!  重箱に顔をうずめる勢いでうな重を頬張った。 「なにこれ! 表面だけがカリッと焼けていて……」 「すぐに柔らかな身が顔を出したと思ったら」 「ウナギのあぶらがじゅわっととろけだしてくる~~~っ」 「それが甘辛いタレの染みたご飯と、噛むたびに混ざり合って……」 「ウナギの濃厚な味わいがっ」 「口いっぱいに広がっていく~~~っ!」  タモちゃんたちの顔つきが、たちまち至福になっていく――。 「今日は登校初日だろ? 祝いの門出だから奮発したのさ。いやあ、めでたい、めでたいぜ!」 「いいなあ、クライネも学校行きたい!」  うな重をかっ込みながら、クライネが甘えた声を出すと。 「何を言ってる。クライネも行くんだぞ!」 「ほんとーーっ? いいのーーっ?」 「もちろんだっ!」  ジュテームのサムズアップが輝いた。 「ジュテームのオジキ好きーーっ!」  抱きついてきたクライネを。 「オジキって呼ぶんじゃねえっっ」  ジュテームが顔を赤らめて押し離す。 「授業料、大丈夫なんですか?」  鈴鹿の憂慮を払拭するほどに。  ジュテームは満面の笑みになって。 「実はよお、俺たちの活躍が結構知れ渡っていてなあ。ジョポンの学校へ入学するのを知ったジョポン政府が、授業料を肩代わりしてくれることになったのさ。政府としても、救世主が自国にいてくれたら安心なんだろう」 「それでうな重なのね!」  タモちゃんのホッとした笑顔に。 「納めた授業料がぜーんぶ戻ってきたからな!」  ジュテームはにんまりと首肯した。 「だが、タダだからって舐めてかかってんじゃねえぞ。しっかりと学生生活、ぶちかましてこいや!」 「おおーーーっ!」  タモちゃんたちは欣喜雀躍として、拳を突き上げたのだった。
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