♯4 癖があっても可愛い人

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♯4 癖があっても可愛い人

 木材と鉄筋コンクリートのハイブリッドでできた近代的な校舎。  そのずっと奥にある、いちばん外れの教室に、タモちゃんたちは通された。  この教室は使われていなかったようで。  生徒は誰も見当たらないし。  机や椅子も真新しくて。  リフォームされたばかりのような、独特の香りが漂っている。  タモちゃんたちはコスモス色の制服スカートをふわりと揺らして。  それぞれ思い思いの席に座った。  机の数は縦四列、横四列の十六席。 「クラス分けというものがあるんだって。エターニャと一緒になれるかな?」 「タモちゃんと一緒じゃなきゃ不登校だと伝えてあるはず!」  タモちゃんとエターニャは真ん中の列の、一番前の席に腰掛けた。  タモちゃんの後ろにはデッドリィが。  デッドリィの右隣に鈴鹿が座る。 「鈴鹿ちゃんは自分の教室に行かなくていいの?」 「ボクもここに来てくれって言われてるんです。どうしてでしょう」  続いて、デッドリィの後ろにクライネが。  クライネの左隣に半が座った。 「学校給食、わくわく!」 「スクールライフ、わくわくです!」  ちなみにクライネは魔法の豆を食べて巨大化していて。 「お揃いってテンションあがるね!」  どうしてもみんなと同じセーラー服を着たかったらしい。  そんなところへ、教員らしき女性がやってきた。  薄紅色のスーツを着こなした、鼻筋が通る柔らかな髪型の人で。  教壇にちょこんと立つと。 「みなさん、おはようございまぁす。うほ!」  ぺこりとお辞儀をして、可憐に微笑んだ。 「うほ?」 「うふって笑ったんでしょ……?」  みなが挨拶を返しながら、小首を捻る。 「私は宇補(うほ)胡桃(くるみ)です!」 「なんだ、うほって名前かあ」 「びっくりした」  タモちゃんとエターニャが聞き間違いかと笑い合う。 「これからみなさんの学力を魔法で測りまぁすね、うほ!」 「やっぱり、うほって言った!」  デッドリィと鈴鹿が顔を見合わせた。 「うほって口癖だったんですね!」 「コロコロしてる声だから、なんか可愛いね!」  半とクライネが肩を上げてキュンとなる。 「まのね・ごきりゅわ・ちもばろこなし!」  宇補先生が学力調査の魔法を唱えると。  タモちゃんたちの頭から五線譜と音符のような記号が浮かび上がってきて。  宇補先生の頭に流れ込んでいったかと思いきや。 「ふむふむ。なるほど。うへへへへ……」  ヨダレを垂らして身悶え始めた。 「あれホントに学力調査してるのかなあ……?」 「なんか秘密的なものを見られてる気がしてイヤですね……」  タモちゃんと鈴鹿たちが懐疑的な目で宇補先生を見ていると。  しばらくしたのち、宇補先生がハッと我に返ってきた。
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