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♯11 タモちゃんって凄い人
ポータルから飛び出たタモちゃんたちを待っていたのは。
焼け野原になったノゴエコ市の町並みだ。
ありとあらゆる建物は破壊され。
瓦礫の合間を縫うように、至る所で火の手が上がっている。
それはまるで、ほころびた火の絨毯だ。
炎によって巻き起こった上昇気流に、火の粉の雨が混じって吹き上がってくる。
黒煙が視野の多くを遮るなか。
目の前には大鎌を持った、マジカリストと思しき少女と。
ジョポンのレジスタンスメンバーらしき男性がうずくまっているのが見えた。
「山背さんっ」
菜乃花が男性に悲鳴を上げる。
「ゾロゾロ出てきて、なぁに? ザコがいくら来たって退屈なのに。しょうがないわね。コイツを始末したら順番に駆除してあげる。並んで待っていなさい」
マジカリストの少女が優雅な身のこなしで大鎌を、レジスタンスの男性の首にかけたとき。
「そこまでよっ!」
タモちゃんが前に出た。
しかしその肩を菜乃花が引き止める。
「バカッ、死ぬ気? あんたが敵うわけないでしょ! ジョポンのトップが太刀打ちできないのに!」
マジカリストの少女が眉を吊り上げて。
「あら、タモちゃん、いたんだ。ザコだと言って悪かったわね」
しとやかに、大鎌を戻して持ち直す。
「え、タモちゃんってマジカリストに名が知られているのっ?」
「もしかしてタモちゃんって凄い人?」
菜乃花と菜乃葉がぽかんとなる。
その態度にマジカリストの少女は呆れ返った。
「知らないの? レジスタンスにも潜りがいたとはね。教えてあげる。タモちゃんはね、名だたるマジカリストを打ち負かしたことで、かなりの有名人なのよ。そうでしょ? 元マジカリストせんぱい!」
切れ長の美しい目で、エターニャたちを横目で見ながら、マジカリストの少女が口元だけであざ笑う。
「かわいい後輩だから忠告してやろう。今すぐ逃げ出したほうがいい」
「あなたが相手にしているのは大物なんてレベルじゃないわよ」
「どうしてもやるって言うならクライネは止めないけど!」
「見くびっていると、今日の戦いがトラウマになって、一生立ち直れなくなっちゃいますよ」
エターニャにデッドリィ、クライネに半が親身になってやさしく注意してあげたのだが。
マジカリストの少女は振る舞いを改めようとしないどころか、大胆不敵な面構えになって。
「せんぱい方の老婆心、ありがたく受け取っておくわ。だけど、大きなお世話さまよ。それはそうと、最後のポニテはだれ? 部外者は引っ込んでなさい!」
半をじろりと白い目で見た。
「ひどいっ、拙者も一応そっち側の人間だったのにーっ。タモちゃん、この人こそ、潜りですーーっ!」
半がタモちゃんに泣きすがる。
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