♯13 いのちの天秤

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♯13 いのちの天秤

 アマツカゼの作り出したポータルから、魅了された生徒たちがわらわら出てきて。  鈴鹿たちをたちどころに捕らえると。 「動くな!」  首元にナイフを押しつけた。 「強化も弱体化もお休みよ。盾のあなたもじっとしていなさい」  アマツカゼが勝ち誇って嘲笑するのを。 「けっ、トウシロのナイフなんざ恐くあるかよ!」  ジュテームがナイフをいともあっさりと取り上げると。 「それならこれでどうかしら」  魅了された生徒たちは一斉に、鈴鹿たちに突きつけていたナイフを自分の喉元に突きつけた。 「何かしたらその子たち、死ぬから」 「させるかっ」  アマツカゼの警告を無視して、ジュテームがナイフを奪い取ろうとしたのだが。 「ジュテームさんっ、ダメです!」  鈴鹿が即座に制止した。  魅了された生徒たちの喉元に、ナイフの切っ先がすでに少し突き刺さっていたからだ。  ひとりからナイフを奪えても、このままでは全員を救えない。 「ここは大人しく従いましょう」  鈴鹿にお願いされて。 「ちっ……」  ジュテームが渋々棒立ちになる。  アマツカゼはそれをほくそ笑んで。 「これで邪魔者はいなくなったわ。タモちゃんと一対一で戦いたいって子、多いのよ。わたしが一番乗りして名誉を独り占め」  タモちゃんにニヤついてみせる。 「まだお前が勝つとは決まってないぞ!」 「勝つわよ。だって。瑠璃色の変なのが教えてくれたもの。タモちゃんは命を削らないと、妖術を唱えられないってことをね!」  それを聞いたジュテームたちが。 「なんだとっ、お嬢……!」  一変して憂色差し迫った表情になる。 「タモちゃん、ウソよねっ?」  デッドリィに問われても、タモちゃんは否定をしなかった。 「本当なのかっ?」 「どうして今まで黙っていたんですっ?」 「近ごろ手の調子が悪かったのは……」 「それが理由だったんだ……!」  エターニャも鈴鹿も半もクライネも、かける言葉を見失って、絶句した。  アマツカゼはくすりと笑って。  優艶に大鎌を振り上げたのち。 「このスフィアのなかにいたら、5分と持たずに干からびて死んでしまうの。わたしとて例外じゃないわ。そしてこれはありったけの妖術じゃないと壊せない」  自分自身に熱風渦巻くスフィアを纏わせた。 「なんのつもりだっ」 「タモちゃんって、例え敵方でも見殺しにできない性格なんでしょ。さあ、命削ってわたしを助けてみせてよ。早くしないと、わたし、死ぬから!」  アマツカゼは苦痛が入り混じった微笑みで。  タモちゃんをじっと直視した。
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