♯15 温かい気持ち

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♯15 温かい気持ち

「数人が協力したところでどうなるっていうの。埋蔵金を掘り出すにはね、大変な労力が必要なのよ」  アマツカゼは難色を示したのだが。 「拙者、土を綿菓子みたいに軽くする魔忍法を知ってますよ?」  半が思いも寄らない手立てを提案してきたので。 「えっ……そんなことができるのっ?」  アマツカゼは目を丸くした。 「ボクも腕力や魔力を強くする術ならできますよ」 「土を取り除く魔法なら、このエターニャさまが力を貸してやれるだろう」 「もしトラップが仕掛けてあっても、クライネが解除してあげる!」  鈴鹿たちも続々と有用な話をし始めて。  デッドリィも後に続こうとしたのだが。 「あっ、あたしはねっ……、ええっとぉ! 黄金が腐らないように冷凍保存してあげるっ……! って、そんな必要ないな……。ガクリ」  力及ばす項垂れる。 「デッドリィちゃん、ドンマイ! 役に立ちたいっていう気持ちが大切!」  面目ないデッドリィを、鈴鹿が協調精神で盛り上げた。 「みんなこう言っている。もう自殺行為はやめねえか」  ジュテームが温かく語りかけると。 「本当に、本当に手伝ってくれるのっ? こんな酷い態度を取ったわたしなんかのためにっ……?」  アマツカゼは涙声で顔をしわくちゃにした。 「お宝を掘り起こそうなんて、一生に一度あるかどうかの面白そうなイベントじゃない!」 「タモちゃん……」 「それに、埋蔵金の使い道が恵まれない子たちを助けるためって聞いたら!」 「ほっとけないですよね!」  デッドリィと鈴鹿が頷き合う。 「みんな……」 「さあ、スフィアを解いて。もう限界よ」  タモちゃんの優しさあふれる命乞いに、アマツカゼは感極まって。 「すぐに解いちゃうわんっ!」  首肯したのち。 「軽っ」 「あのクールなアマツカゼはどこにっ!」  魅了されていた生徒たちにナイフを下ろさせて。  熱風スフィアの魔法を解こうとしたのだが! 「ぐぁああーーーっ」  どす黒い大蜥蜴(おおとかげ)がアマツカゼの胸から飛び出した!  大蜥蜴はアマツカゼの体に巻きついて、再び体のなかへ入り込んだと思いきや。 「アマツカゼ! どうしたのっ!」 「タモちゃん離れろ!」 「かすかだけど、あの人の気配がする!」  エターニャとデッドリィがタモちゃんをアマツカゼから遠ざけた直後。  アマツカゼの目が紫にぎらついて。  魅了された生徒たちの目も同時に紫にぎらついた。 「動くな!」と、野太い声を発声し。  ナイフを再び喉元に突きつける。 「まずい。俺たち全員をここで始末する気だぞ!」  ジュテームが何か策はないかと辺りを見渡すや否や。  空気の温度が致死的に急上昇し始めた。 「この……生徒たちさえ、なんとかなれば……」 「あたしとエターニャさんで……アマツカゼのスフィアを壊してみせるのに……!」  鈴鹿やデッドリィたちが苦痛を浮かべて、手や膝を地面へ突き立てる。
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