♯11 覚醒!

1/1
前へ
/205ページ
次へ

♯11 覚醒!

 校長先生の頭が後光のように煌めきだしたかと思えば。  校長が椅子をくるりと回して、こちらに向き直り。 「よくぞすべての材料を集めたな!」  お釈迦様のような手のポーズをしてみせた。 「校長せんせいっっ?」 「わしが覚醒したということは、この学校の秘密(シークレット)課題(クエスト)をすべて達成したということじゃ。褒めてやろう!」 「あの死闘は学校行事だったっていうのっ?」 「学生の課題にしては、海の神様はやり過ぎですよぉ!」  タモちゃんと鈴鹿が抗議をするが。 「海の神様? はて、なんのことかの?」  校長先生は事態が飲み込めないような、きょとんとした顔をした。 「えっ……?」 「それはそうと、褒美をせねばな! なにが欲しいのじゃ? 黄金かあ?」  校長先生がウキウキとして聞いてくるので。 「それなら、不死の薬が欲しいです!」  アマツカゼが、いの一番に望みを言うと。  校長先生は目を見張らせて。 「なんと! 不死の薬じゃとっ?」 「はいっ!」 「がくーーん」  背骨が折れたのではと、錯覚するほどに項垂れた。 「え、どうしたんですかっ?」  アマツカゼの憂色に。 「つい昨日のことなんじゃが、不死の薬は奪われてしまってのう……。残念ながらここには無い」  校長先生がいじけて言う。 「ええーーっ、誰にですかっ?」 「エディモウィッチじゃ」  その呼称を聞いて、タモちゃんたちは顔を見合わせた。 「巨神がいたから、あたしたちに取りに行かせたんじゃなかったんだ!」 「ボクたちを学校から遠ざけるのが大本命だったんですよ!」 「最初から仕組まれていたんだっ」と、タモちゃんや鈴鹿たちが悔しがる。 「それじゃ、エディモウィッチはもう不死に……」  タモちゃんたちが落胆の色を浮かべたのだけれど。 「それは安心せい。不死の薬の使い方をやつは知らん!」  校長先生はふんぞり返った。 「使い方? 飲むだけじゃないの?」 「うむ。不死になるには特別な作法が必要でな。もし取り返せたなら、そなたらに教えてやろう」 「やった!」  タモちゃんたちに希望の光が差し込んできた。 「でもエディモウィッチの居場所が……」 「やつには不死になる嘘の方法を教えてある。今ごろせっせとこなしているはずだ。しかしすべての順序をこなせば、不死になれないことに気がついて嘘がばれる。そうなればまた行方がわからなくなるだろう。やつが最後の段取りに向かったときが、最後のチャンスとなろう!」 「それはどこ! どこに行けばいいのっ?」 「深海に行くが良い」 「深海……?」 「チャレンジャー(チョルンジョー)海淵(かいえん)のどん底には、古代宇宙人が築いた海底都市がある!」 「そんな話聞いたこともないけどっ?」 「やつには深夜3時にそこへ向かへと言ってある」 「3時って、今日のですかっ?」 「うむ。もしどうしても不死の薬がほしいなら、どうにかしてそこへ行き、薬を奪い返してくるのじゃ!」  校長先生が前腕を上げる仕草をしたかと思えば。  タモちゃんたちが浮き上がって、扉の方へ運ばれていく。 「あ、待って!」 「もう時間がない。秘密の課題をクリアした君たちなら、取り返すことができるやもしれん。気をつけて行くのじゃぞー……」  校長先生は声をこだまさせながら、タモちゃんたちを廊下へぽいっと追い出した。  校長室は固く閉ざされてしまった。 「チャレンジャー(チョルンジョー)海淵(かいえん)ってどこ?」 「マリアナ海溝です! こちらではモラオノ海溝と言って、フィリピン沖、つまりファラパン沖にあるんです!」  タモちゃんに鈴鹿が答えてみせると。 「鈴鹿さん、大正解でっす!」  宇補先生が花丸を宙に描いてみせた。 「それって、最深部まで11キロもあるぞっ? どうすんだぁあああっ!」 「エターニャさんも、大正解でぇっす!」  宇補先生がまたまた花丸を描いてみせる。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加