♯12 クライネって!?

1/1
前へ
/205ページ
次へ

♯12 クライネって!?

「深さ11キロッ?」 「キロってなによ。単位おかしいでしょ!」  デッドリィとロナが眉を吊り上げた。 「この距離じゃ歩いて行けたとしても、もう時間に間に合いません!」 「どうやって海底まで行けばいいのよ!」  アマツカゼと半の、怒りにも似たつぶやきに。 「大深度有人潜水調査船の、しんかい12000なら行けるかもですが……」  鈴鹿が案を述べてみるも。 「調査船、借りられないよね」 「こんな夜中に貸してくれるわけないわ!」  菜乃葉も菜乃花も意気消沈で。 「借りられたとしても、定員オーバーでみんなは乗れない。それに、潜水速度が遅くて深夜3時までに海底に辿り着くなんて到底不可能だ」  エターニャたちはすっかりあきらめモードだ。 「鈴鹿ちゃん、行けない?」 「デッドリィちゃん、移動できても空気がないし、水圧でぺっちゃんこです」  打つ手なしと、みなが口を閉ざしてしまった、そんなときに。 「クライネなら、みんなを連れて行けるかも!」  クライネが元気よく挙手をした。 「おお!」 「なにか特別な魔法を知ってるんだな!」  ジュテームたちの気概が一気に高まったのだが。 「違うよ。クライネが乗ってきた宇宙船なら、深海でも平気ってこと!」 「う、宇宙船~~~っ?」  クライネがとんでもないことを言い出したものだから。 「クライネって、宇宙人なのおっ?」  ロナやデッドリィたちが前のめりになって驚いた。 「正確に言うとね、この宇宙の外の宇宙から来たから、外宇宙人だよ!」 「外宇宙人っ……!」 「なにその外国人の強化版みたいなの! 初めて聞く言葉なんだけど! 妖精じゃなかったのっ?」 「妖精なんて非現実的なものじゃないよ。ただの外宇宙人だよ! 地球は有名な観光地だったから旅行で来たんだ。そしたらあの方に捕まってさー」 「宇宙じゃ地球って有名だったのね……」 「どんなところを観光してるんだか……」 「知的生命体がいる惑星なんて、珍しくもないし、宇宙じゃ双子星も珍しくないんだけどね。双子星のどちらの惑星にも知的生命体がいるっていうのが、ちょーレアなんだ!」  双子星の話を聞いていたタモちゃんが、むかし居た地球を思い起こして。 「あたしをもうひとつの地球に連れて行けたりする?」  クライネに尋ねてみると。 「できるけど、死んじゃうよ!」  クライネは万歳しながら無理だと言った。 「なんで?」 「反物質と物質はひっつくと対消滅(ついしょうめつ)しちゃうんだ」 「どゆ? なんのこと?」 「ここは反物質の世界で、もうひとつの地球は物質の世界」 「ん??」 「地球の言葉で説明するのは難しい。でも表現するなら……。宇宙の果てには情報が刻まれている平面があってね。それを投影したのがこの世界。つまり、ホログラム宇宙なの!」 「なぬ??」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加