22人が本棚に入れています
本棚に追加
♯13 みんなで、行こーーっ!
「同じ時空に物質世界のホログラム宇宙と、反物質世界のホログラム宇宙が投影されているんだけれど、自然現象ではお互いが交わることはないし、見えることもありえない!」
「いきなりクライネが大天才にっ……」
「クライネ、かしこい子!」
「よくわかんないけど、クライネは反物質の世界の人だから、ここにいられるのね?」
「違う! とにかく凄い人が凄いテクノロジーを生み出して、旅行できるようにどうにかしてくれてるってことね!」
「なんだかなー」
タモちゃんは頭が凝り固まってきた。
「もしかして、クライネさんは魔法じゃなくて、なにか凄いテクノロジーを使ってるんじゃないですかっ? はふーっ」
大好きな宇宙の話に、大興奮した鈴鹿がクライネに取りつくと。
「魔法と言えば魔法だけどね! どうせ考えても違いなんてわかんないよ!」
負けじと興味津々なエターニャが目を光らせて。
「外宇宙人ってことは、クライネって、本当は自分の名前があったりするのかっ?」
「あるよ! でも地球の言語じゃ発音できないね! 例えばこんな感じ!」
クライネがスマホを取り出して、電話アプリでピ・ポ・パと鳴らした。
「なるほど!」
「ピポパちゃん!」
エターニャと鈴鹿が、手を打って理解を分かち合う。
「クライネさんは旅行者なんですよね? お家に帰らなくてもいいんですか?」
半が心配そうに聞くと。
「あの方に地球が支配されたら、もう旅行どころじゃなくなっちゃいそうだもん。クライネが役に立つなら協力したい! クライネは地球の食べ物が大好きだから! でへへっ……」
クライネは何かを思い浮かべて、涎をすすった。
「みんな一旦、落ち着こう! だいぶ話がそれちまったが、クライネの宇宙船なら海底までいけるんだな?」
「うん! 都市があるなら入ることもできるかも!」
クライネはジュテームに大きく頷いた。
「いきなりSFファンタジーになってきちゃいましたね!」
宇補先生がきゃぴっと弾けて。
「でも、それで行けるならっ!」
「行くっきゃないよねっ!」
「みんなで、行こーーっ!」
菜乃葉と菜乃花、アマツカゼも飛び跳ねた!
「宇宙船はどこにあるの?」
「タモちゃん、いま、呼んだげる! おいで、ムギ!」
クライネが呼びかけた途端に。
窓からまばゆい光線が差し込んできたかと思いきや。
子供のような声とともに。
「会いたかったよぉーーっ!」
グラウンドいっぱいに、巨大な物体が現れた。
それは旅客機のような形状で、窓がたくさんある機体だが。
翼もエンジンも見当たらない!
それが音もなくピタリと宙に浮いている。
いわゆる葉巻型UFOに似ている姿で、主翼も水平尾翼もない、真っ白に輝くジェット機と言ったところだ。
「名前がムギって、犬みたい!」
「だってムギは、クライネのペットだもん!」
「てゆか、これで攻撃すれば、エディモウィッチなんてイチコロなんじゃ」
「デッドリィしゃま、武器なんかついてないよ。クライネがいた世界は争いごとなんてないからね! さあ、誰がチョルンジョー海淵にいく?」
「はいはい! 先生が1番に乗ってみたいでっす!」
「エターニャも乗せてっ! 乗せてっ!」
「ボクもっ! ボクもっ!」
宇補先生とエターニャと鈴鹿が真っ先に、目をキラッキラさせて挙手をして。
疑いの余地がない宇宙船を、実際に目の当たりにしたタモちゃんたちも、さすがに、うずうずした目をクライネに覗かせた。
「それじゃみんなを宇宙船に転送するよ! ムギ、クライネたちを拾って!」
クライネがそう発した直後。
「いらっしゃーーいっ!」
タモちゃんたちは光に包まれ、一瞬でかき消えたのだった!
最初のコメントを投稿しよう!