♯13 みんなで、行こーーっ!

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♯13 みんなで、行こーーっ!

「同じ時空に物質世界のホログラム宇宙と、反物質世界のホログラム宇宙が投影されているんだけれど、自然現象ではお互いが交わることはないし、見えることもありえない!」 「いきなりクライネが大天才にっ……」 「クライネ、かしこい子!」 「よくわかんないけど、クライネは反物質の世界の人だから、ここにいられるのね?」 「違う! とにかく凄い人が凄いテクノロジーを生み出して、旅行できるようにどうにかしてくれてるってことね!」 「なんだかなー」  タモちゃんは頭が凝り固まってきた。 「もしかして、クライネさんは魔法じゃなくて、なにか凄いテクノロジーを使ってるんじゃないですかっ? はふーっ」  大好きな宇宙の話に、大興奮した鈴鹿がクライネに取りつくと。 「魔法と言えば魔法だけどね! どうせ考えても違いなんてわかんないよ!」  負けじと興味津々なエターニャが目を光らせて。 「外宇宙人ってことは、クライネって、本当は自分の名前があったりするのかっ?」 「あるよ! でも地球の言語じゃ発音できないね! 例えばこんな感じ!」  クライネがスマホを取り出して、電話アプリでピ・ポ・パと鳴らした。 「なるほど!」 「ピポパちゃん!」  エターニャと鈴鹿が、手を打って理解を分かち合う。 「クライネさんは旅行者なんですよね? お家に帰らなくてもいいんですか?」  半が心配そうに聞くと。 「あの方に地球が支配されたら、もう旅行どころじゃなくなっちゃいそうだもん。クライネが役に立つなら協力したい! クライネは地球の食べ物が大好きだから! でへへっ……」  クライネは何かを思い浮かべて、涎をすすった。 「みんな一旦、落ち着こう! だいぶ話がそれちまったが、クライネの宇宙船なら海底までいけるんだな?」 「うん! 都市があるなら入ることもできるかも!」  クライネはジュテームに大きく頷いた。 「いきなりSFファンタジーになってきちゃいましたね!」  宇補先生がきゃぴっと弾けて。 「でも、それで行けるならっ!」 「行くっきゃないよねっ!」 「みんなで、行こーーっ!」  菜乃葉と菜乃花、アマツカゼも飛び跳ねた! 「宇宙船はどこにあるの?」 「タモちゃん、いま、呼んだげる! おいで、ムギ!」  クライネが呼びかけた途端に。  窓からまばゆい光線が差し込んできたかと思いきや。  子供のような声とともに。 「会いたかったよぉーーっ!」  グラウンドいっぱいに、巨大な物体が現れた。  それは旅客機のような形状で、窓がたくさんある機体だが。  翼もエンジンも見当たらない!  それが音もなくピタリと宙に浮いている。  いわゆる葉巻型UFOに似ている姿で、主翼も水平尾翼もない、真っ白に輝くジェット機と言ったところだ。 「名前がムギって、犬みたい!」 「だってムギは、クライネのペットだもん!」 「てゆか、これで攻撃すれば、エディモウィッチなんてイチコロなんじゃ」 「デッドリィしゃま、武器なんかついてないよ。クライネがいた世界は争いごとなんてないからね! さあ、誰がチョルンジョー海淵にいく?」 「はいはい! 先生が1番に乗ってみたいでっす!」 「エターニャも乗せてっ! 乗せてっ!」 「ボクもっ! ボクもっ!」  宇補先生とエターニャと鈴鹿が真っ先に、目をキラッキラさせて挙手をして。  疑いの余地がない宇宙船を、実際に目の当たりにしたタモちゃんたちも、さすがに、うずうずした目をクライネに覗かせた。 「それじゃみんなを宇宙船に転送するよ! ムギ、クライネたちを拾って!」  クライネがそう発した直後。 「いらっしゃーーいっ!」  タモちゃんたちは光に包まれ、一瞬でかき消えたのだった!
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