22人が本棚に入れています
本棚に追加
♯16 それでも助けたい!
「ムギ、時間停止!」
クライネが命令した途端。
タモちゃんたちの時の流れがピタリと止まった。
「この先、タモちゃんたちはどうなる?」
クライネがムギに尋ねると。
「このままだと最悪の事態になるーーっ!」
「タモちゃんたちが助かるように、未来の情報を書き換えることは可能?」
「クライネさまの権限ならできるーっ! でも、命にまつわる情報を書き換えるには、許可されてる容量が足りなくて無理ーーっ!」
「クライネの権限で、ごり押しできない?」
「できるーーっ!」
「それじゃ妨げになる全てのエラーを無視! タモちゃんたちが助かる未来に、情報をただちに書き換え準備!」
「ケイコク! ケイコクーーッ! そんなことを強引にしたら、世界が急変しちゃって、どうなっちゃうか予測できなくなるーーっ!」
「わかる範囲で教えて!」
「クライネさまはこの宇宙から強制的に追い出されるーっ。クライネさまに関する情報が、情報の平面からすべて消去されるーっ。もう二度とこの宇宙には立ち入れないーっ。それでも、やるーーっ?」
「そっか……、タモちゃんたちに会えなくなっちゃうのか……。でも、このまま死んじゃうのはもっとやだ!」
「代償として、タモちゃんたちからクライネさまの情報がぜーんぶ消失しちゃうよーっ? ホントにやるーーっ?」
「うん、忘れられたとしても、クライネはタモちゃんたちを助けたい!」
「最後の確認だよーっ。実行、するーーっ?」
「…………。ムギ! 書き換えをすぐさま……、実行!」
「はーーいっ! 実行中……」
クライネは、時が止まったままのタモちゃんを抱きしめた。
「タモちゃん、クライネはみんなと出会えてうれしかったよ。一緒にご飯が食べられて、とても幸せだったよ。また、食べたかったけど……」
「書き換え……、終了ーーっ! 強制送還っ!」
「みんな! さようならーーーっ!」
全速力で走る列車の線路に突然、別の線路が連結されたかのように。
列車の進行方向が無理矢理に変更されて、脱線寸前の大きな反動が、世界中を激しく揺らして返した。
宇宙を構成している次元のひとつの精神領域が、壊れそうなほどに波打って。
タモちゃんたちは真実の夢幻を、走馬灯のように共有して見る――。
最初のコメントを投稿しよう!