♯19 偽りの記憶・シーン1

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♯19 偽りの記憶・シーン1

 再び、夢幻がタモちゃんたちに別の真実を映し出す――。  窓をすべて失った家屋の建ち並ぶ街並み。  緑もすべて焼け。  黒煙が立ちこめて昼間でも薄暗く、焦げ臭いにおいが漂う町中で。 「この戦争、いつまで続くんだ?」 「知るかよ。さっさと済ませようぜ!」  迷彩柄の戦闘服を着た男たちが、トラックの荷台に薄汚れた子供たちを抱えては乗せていく。 「孤児は何人だ?」 「今日は18人だな」  小学校低学年くらいの子供たちを、幌つきの荷台にぎゅうぎゅうに詰め込んで、トラックは走り出した。  幾時か走ったのち。 「おまえたちの収容所に着いたぞ」  子供たちが荷台から降ろされて。 「ついてこい」  コンクリートが剥き出しの、冷たい大部屋に入れられる。 「ここがおまえらの家だ。呼ばれるまで大人しくしてろ。まずは、おまえと、おまえ……、おまえも来い」  男たちが数人の子供をつれて部屋を出た。  扉の鍵を閉められて、足音が立ち去っていく。  子供たちはしばらく黙っていたが。  ひとりの少女が。 「あたし、ロナ!」  となりの女の子たちに話しかけた。 「アンネッタよ!」 「わたしはビアンカ!」  会話をして少し緊張がほぐれたのか、少女たちは微笑み合った。 「どこに連れてったのかな」 「きっと里親の面接よ」 「みんな戦争孤児だもの」 「ふうん、アンネッタもビアンカも賢いね!」 「前に似たような話を聞いたから」 「優しい里親だったらいいな」 「ねえ、どんな親が来てるのか、見に行ってみない?」  ロナが扉に駆け寄るが。 「鍵がかかってる!」  扉は開かなかった。  するとアンネッタとビアンカが。 「来て! 窓が開いてる!」 「ここから出られそう!」 「ナイス!」  ロナたちは窓から外へ出た。  するとすぐに。 「なに? この変なにおい」 「あっちから臭ってくる!」 「行ってみよう!」  建物に沿って走り出す。  そして突然! 「伏せて!」  ロナの警告とともに、アンネッタとビアンカが建物に寄り添って地面に伏せると。  窓が開いて、誰かが顔を突き出した!
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