22人が本棚に入れています
本棚に追加
♯20 偽りの記憶・シーン2
部屋の奥から「行くぞ」という声が聞こえて、窓はすぐに閉められた。
「超ヤバかったね!」
「なんかスパイみたい!」
「エージェントたち! 臭いの正体を確かめるぞー!」
ロナたちは静かにはしゃぎながら一致団結。
小走りで建物のそばを走り抜け。
端っこまでやってくると。
目だけを出して、角の向こうを覗いてみた。
荒れ地に小屋がぽつんとひとつ建っていて。
その傍らにロナたちをここへ連れてきた男たちが立っていた。
その近辺から煙がもくもくと上がっているようだ。
「なにしてるんだろ」
「あそこから臭ってきてる」
「なにか焼いてるみたいね」
ロナたちは小屋まで走っていって。
物陰から男たちを垣間見ながら。
なにを話しているのか、耳をそばだてた。
「子供を殺して燃やす仕事なんて、俺もうやだよ」
――えっ……!
「しょうがねえだろ。あいつらを養う食料はねえんだ。餓死させるより、安楽死させてやった方がいいに決まってる」
「けど人権団体に嗅ぎつけられたら……」
「奴らが出しゃばれるような状況じゃねえよ」
「くそっ、これもみんな戦争が悪いんだ!」
「戦争っつーより、エディモウィッチがあいつらの親を皆殺しにしたから、こうなったんだろ」
「なんであいつは人を殺すんだ?」
「知るかよ。おい、だいぶ、かさが減ってきた。何人かガキをつぶしてこい」
「また俺かよ!」
「夜までに全員燃やすぞ! 急げ!」
男が小屋の方へ近づいてくる。
「は、早く、逃げなきゃ」
ロナたちは逃げようとしたのだが。
足がすくんで立ち上がれなかった。
「そこに誰かいるのかっ!」
男たちが駆け寄ってきて。
「おまえら、聞いてたなっ!」
「しょうがねぇ子供たちだ。見逃すわけにはいかねぇぞ。今すぐ天国へ連れていってやるから、じっとしてろよ……」
男たちが鉈を振りかざしたとき!
「カリ・ウビラヲン!」
魂でも抜かれてしまったかのように。
男たちが口から泡を吹いて、バタリバタリと動かなくなってしまった。
ロナたちが唖然としていると。
どこからともなく声が聞こえてきて。
「わたしの里子にならないか。そうすれば嫌な記憶をぜーんぶ消してあげる。暖かい部屋と、温かい食事と、暖かいベッドが待ってるよ」
夢幻を見ているタモちゃんたちにはもう、それが誰だかすぐにわかった。
――エディモウィッチだ!
――みんな逃げて!
助けられたと勘違いをしたロナたちは。
「なる!」
「あたしも!」
次々と。
――ダメよ! そいつが親のカタキなの!
――騙されちゃダメだーーっ!
「ロナも! ロナも!」
手を上げたのだった。
エディモウィッチは約束通り、ロナたちの嫌な記憶をすべて消し。
都合の悪い記憶も、綺麗に消してしまって。
ロナたちを連れ去っていったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!