♯20 偽りの記憶・シーン2

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♯20 偽りの記憶・シーン2

 部屋の奥から「行くぞ」という声が聞こえて、窓はすぐに閉められた。 「超ヤバかったね!」 「なんかスパイみたい!」 「エージェントたち! 臭いの正体を確かめるぞー!」  ロナたちは静かにはしゃぎながら一致団結。  小走りで建物のそばを走り抜け。  端っこまでやってくると。  目だけを出して、角の向こうを覗いてみた。  荒れ地に小屋がぽつんとひとつ建っていて。  その傍らにロナたちをここへ連れてきた男たちが立っていた。  その近辺から煙がもくもくと上がっているようだ。 「なにしてるんだろ」 「あそこから臭ってきてる」 「なにか焼いてるみたいね」  ロナたちは小屋まで走っていって。  物陰から男たちを垣間見ながら。  なにを話しているのか、耳をそばだてた。 「子供を殺して燃やす仕事なんて、俺もうやだよ」  ――えっ……! 「しょうがねえだろ。あいつらを養う食料はねえんだ。餓死させるより、安楽死させてやった方がいいに決まってる」 「けど人権団体に嗅ぎつけられたら……」 「奴らが出しゃばれるような状況じゃねえよ」 「くそっ、これもみんな戦争が悪いんだ!」 「戦争っつーより、エディモウィッチがあいつらの親を皆殺しにしたから、こうなったんだろ」 「なんであいつは人を殺すんだ?」 「知るかよ。おい、だいぶ、かさが減ってきた。何人かガキをつぶしてこい」 「また俺かよ!」 「夜までに全員燃やすぞ! 急げ!」  男が小屋の方へ近づいてくる。 「は、早く、逃げなきゃ」  ロナたちは逃げようとしたのだが。  足がすくんで立ち上がれなかった。 「そこに誰かいるのかっ!」  男たちが駆け寄ってきて。 「おまえら、聞いてたなっ!」 「しょうがねぇ子供たちだ。見逃すわけにはいかねぇぞ。今すぐ天国へ連れていってやるから、じっとしてろよ……」  男たちが鉈を振りかざしたとき! 「カリ・ウビラヲン!」  魂でも抜かれてしまったかのように。  男たちが口から泡を吹いて、バタリバタリと動かなくなってしまった。  ロナたちが唖然としていると。  どこからともなく声が聞こえてきて。 「わたしの里子にならないか。そうすれば嫌な記憶をぜーんぶ消してあげる。暖かい部屋と、温かい食事と、暖かいベッドが待ってるよ」  夢幻を見ているタモちゃんたちにはもう、それが誰だかすぐにわかった。  ――エディモウィッチだ!  ――みんな逃げて!  助けられたと勘違いをしたロナたちは。 「なる!」 「あたしも!」  次々と。  ――ダメよ! そいつが親のカタキなの!  ――騙されちゃダメだーーっ! 「ロナも! ロナも!」  手を上げたのだった。  エディモウィッチは約束通り、ロナたちの嫌な記憶をすべて消し。  都合の悪い記憶も、綺麗に消してしまって。  ロナたちを連れ去っていったのだった。
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