♯21 謀られた命拾い・シーン1

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♯21 謀られた命拾い・シーン1

 夢幻はまたもや、とある真実をタモちゃんたちに覗かせる――。  薄いトタンで作られた質素な家は、ところどころに穴が開いている。  家の中は窓もなく。  とても狭くて蒸し暑い。  そして昼でも暗かった。  ここは身寄りのない母と娘が夜をやり過ごすためだけの寝床。  着ている服はいつもおなじTシャツで。  靴は履いたこともない。 「ねえ、お母さん。わたし、ここ、嫌い。他に住むところないの?」 「ごめんね。この国じゃ難民はスラム以外に行くところがないの。祖国を丸ごと焼き払われなければ、こんなことにならなかったのだけど……」 「だれがやったの?」 「エドー……、いいえ、ディマモとか言ったかしら。よく知らないわ」 「わたし、ゴミ捨て場からお金になりそうなものを拾ってくる。早くこんなとこ、抜けだそう!」 「いつも悪いわね。足が良くなったら、お母さんも一緒に探すからね」 「うん! いってきます!」  娘の仕事はゴミ拾い。  くず鉄なんかを拾っては、リサイクル業者に持って行って、わずかな金をもらう。  日が暮れるまで探し回って、稼ぎは1日1ドル未満だ。  1ドル稼いで食事が1日1回あれば、まだ良い方で。  不衛生な水だけで過ごす日もざらにある。  娘が向かったゴミ捨て場は、もちろん無分別で。  生ゴミから、粗大ゴミまで、何でも捨ててある。  そこかしこが、なにかしらくすぶって煙が出ていて。  汚い水たまりがあって。  ひどい悪臭が漂っている。  それが見渡す限りの地平線まで広がっている。  そんな広大な場所でも。 「てめえ、ここは俺たちの縄張りだって言ってんだろ! くんなよ!」 「早く消えろ! 痛い目に遭わせるぞ!」  学校に行っていれば小学生くらいだろうか。  娘と同年くらいの子供たちに、脅されることもしばしばだ。  それでもたまには。 「あ! アーマちゃん! 久しぶり!」 「ルシアちゃん! しばらく見ないから心配してたよ!」 「うん、丘で探してたらバレちゃってさ。ちょっと隠れてたの」 「最近あいつらが縄張りだって言ってるところか」 「アーマちゃんも気をつけた方がいいよ。容赦ないから」 「うん。でも無事で良かった」 「ねえ、見て見て。さっき拾ったの」  ルシアが雑誌を開いて見せて。 「綺麗な服でしょ!」  サファイアブルーの夜会服を指してみせた。 「なにか食べてるね! 机にお皿がいっぱい!」 「パーティーよ、きっと!」 「これがパーティーかあ!」 「あたし、大人になったらアイドルになって、絶対パーティやってやるんだ!」
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