♯22 謀られた命拾い・シーン2

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♯22 謀られた命拾い・シーン2

「こんな素敵な世界って、本当にあるのかなあ」 「あるわよ! あたしが招待してあげるから、アーマちゃんもアイドル目指しましょうよ!」 「それにはお金が必要だよね! 頑張って鉄くずいっぱい拾おう!」  ふたりで協力して探した甲斐があってか。  リサイクル業者から笑顔になって、ふたりは出てきた。 「2ドルにもなったよ! ルシアちゃん!」 「最高記録だね、アーマちゃん!」 「ご飯、なに食べようかなあ!」 「ねえ、明日も一緒にやらない?」 「うん、ゴミ捨て場の外れで待ってるね!」  ルシアと分かれたアーマが、足取り軽く寝床へ帰ってくると。  のっぽで痩せた男が入り口に立っていた。 「売人っ? まさかっ」  寝床の小屋の中で、母親がぐったりとしているのが見えた。  うつろな目つきで、ずっと天井を見つめている。  男がアーマに気がついて。 「その金よこせっ」  持っていたお金を奪い取った。 「返して!」 「おまえの親が空腹を忘れられる薬が欲しいって言うから、格安で売ってやったんだ。感謝しろ!」 「それがないとご飯がっ……」 「知るか! くそでも食ってろ!」 「返してっっ!」  アーマが売人の男の服を引っ張るや否や。 「てめえ、破りやがったな! 汚い手で触りやがって! 来い! 臓器を売りさばいてやる!」 「いやあっ、たすけてっ。おかあさんっ」  売人がアーマの髪の毛を引っ掴んだとき。 「カリ・ウビラヲン!」  声がした途端。 「うぐぅあああぁあっっ」  売人がのたうち回って。  仰向けに倒れると――。  ぱったり、動かなくなった。 「やあ、アーマ。恐かったね」  声はすれども、姿は見えない。  だけども、タモちゃんたちにはそれがエディモウィッチだとすぐにわかった。  アーマはキョロキョロ見渡しながら。 「あなたが助けてくれたの?」 「そうだよ。良かったら、うちに来ないかい? ご飯をご馳走するよ」  ――ダメだ! 行っちゃダメ! 「そうしたいけど、お母さんが……」 「大丈夫。お母さんには新しいお家をあげて、ご飯も届けてあげる」 「本当にっ?」 「ああ、本当だとも。遊びにおいで?」 「行く!」 「良かった。今日から君はアマツカゼと名乗りなさい。ふつうの女の子になれるんだ。アイドルにだってなれるかもしれないよ。うれしいね」  アマツカゼの体が風の渦に包まれて。  エディモウィッチの、ほくそ笑む声がこだまするなか。  ――行っちゃダメだ! 祖国を焼き滅ぼしたのはそいつ! エディモウィッチなんだからーーーっ!  ふわりと舞い上がっていく――。
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