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♯18 タモちゃん、大ピンチ!
燃えて燃えて、燃え爆ぜる業火の中から、幾多の光が煌めいた。
命からがら飛び出したのは、真っ黒けになったエターニャだ。
「あつーーっ、あつーーっ、あつうーーーっ!」
体中に身につけていたアクセサリーのマジックアイテムが、次々に割れて砕け散る。
「これひとつ100万するんだぞ! タモちゃんの、ばかーーーーーっ!」
真っ裸で泣きべそ顔のエターニャが。
空の彼方へと。
全速力で逃げ去っていく――。
「精神チャージ!」
タモちゃんがそう言って、張り詰めていた気持ちを緩めた途端に。
ぶわっと涙があふれ出してきた。
「ふぇ~~ん、にぃにぃ、恐かったよ~~~っ」
タモちゃんがジュテームの足にしがみつくと。
「にぃにっ……、なんだよ急にかわいくなりやがったな!」
ジュテームは照れくさそうにタモちゃんの頭を優しく撫でた。
「なんだかんだ言って、ジュテームさんが大好きなんですよ、タモちゃんは!」
鈴鹿がキュンキュンして胸に手をあて、片足立ちで飛び跳ねる。
「ぁとわぁ……、ぉ願ひ……」
そのまま倒れかかったタモちゃんを。
「やっぱり疲れて眠んのかいっ」
ジュテームが抱き留める。
「まったく、一撃とは大したお嬢だぜ」
「でもまた逃げられてしまいましたね」
鈴鹿の目にはもう夕焼け空しか映らない。
「生きてりゃ何度だってチャンスがあるさ。何があっても俺がお嬢を守ってやることにしたからよお!」
「おや、ついにタモちゃんを救世主だと認めるんですね!」
「はっ、お嬢を救世主だと認めねえ奴は、例え鈴鹿だろうが、誰だろうが、俺がぶっ飛ばす!」
「ボクは端から救世主だと認めてましたよ?」
「そうだっけか? まあ、俺もそういうことだから、これからもよろしくたのむぜっ! なっはっは!」
ジュテームがニヤニヤしながら、あざとく笑うと。
「タモちゃんに縋りつかれたのが、そんなに嬉しかったんですか? もうっ!」
鈴鹿もぷぷっと吹きだした。
ふたりはエターニャが逃げていった夕空を見上げて笑い合い。
生きていることの喜びを噛みしめながら、ふうっと息をつく。
そして、明日へのまだ見ぬ戦いに気を引き締めるのであった。
一方そのころ、ギルーテビラツン王国の首都レンデン北西部にある農村の村長宅では。
「おや? わしのお手製毛生え薬はどこいった?」
村長は毛生え薬があるはずの棚に、ポーションを見つけてぎょっとして。
「も、もしや、あの方がお飲みになったのは……! はわわわわ~~~~~っ」
光頭を青ざめて、卒倒していたのであった。
後日、お詫びに訪れた村長から毛生え薬の事実を聞かされて。
タモちゃんが飲食を戻していたのは内緒の話。
それでも今後の保険のために、鈴鹿が大量の毛生え薬を村長に発注したとか、していないとか。
タモちゃん、大ピンチ!
第2章へ つづく!
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