♯4 愛情たっぷり、包帯たっぷり

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♯4 愛情たっぷり、包帯たっぷり

 目をしょぼしょぼさせながら、タモちゃんと鈴鹿は食卓の席に着く。  そしてパンケーキのひとつにフォークをザクリと突き刺して。  ジャリジャリと平らげていくのだが。  余りの意想外な歯触りに。 「焦げてるわけではないようだけど……、鈴鹿、これはなにが入っているのかなあ……?」 「黒糖か、グラニュー糖……、ではないみたいですよねーーっ、甘くないしーーっ」  歯を剥き出したまま食べ続けるタモちゃんたちに。  ジュテームがそっと寄り添った。 「それはね、僕が丹精込めて作った、食べれる腐葉土!」  耳打ちと同時に、タモちゃんと鈴鹿が噴き出すように吐き出した。 「土なんか食えるか、このヤンデレ・ミドルがーーーっ!」  タモちゃん渾身の鉄拳がジュテームのこめかみにヒットして。 「あふん!」  ジュテームは思いのほかあっさりと気絶した。 「草食男子化してて助かりましたね」 「うむ。気がつく前にさっさとペーロンデへ連れて行こう。でもどうしよう。ヤンデレ・ミドル(こんなの)担いで連れてけないぞ……」  ジュテームが細マッチョ並にスレンダーとは言え、大人男子の体格だ。  身長100センチのちびっ子タモちゃんと、か弱い鈴鹿が力を合わせたところで、引きずるくらいがやっとのことで。 「そうだ! タモちゃん、ちょっと待ってて下さい。たしかあそこに……」  鈴鹿が何かを思いつき。 「これです!」  物置から青い車椅子を持ってきた。  ノーパンクタイヤを備えた、頑丈そうなスチール製で。 「おお! 逃げられないよう体を縛って、そいつに乗せていこうじゃない!」 「縛れるものを探してきます!」  数分後――。 「ロープがなかったので、包帯で縛ったはいいですけれど……」  鈴鹿とタモちゃんの目に映るのは、全身を包帯でグリングリンに巻き上げられたジュテームだ。  その、あまりにもへんてこりんな仕上がりに。 「うむ。どこ行くんだっけ。エジプト?」  タモちゃんがおどけて尋ねると。 「ミイラみたいになっちゃってますけどっ、行くのはポーランドですーーっ!」  出来の悪さを気にしていたのか、鈴鹿が顔を真っ赤にして訂正したので、タモちゃんは思わずぷっと吹き出した。 「ああ! そうだった。でも、ポーランドと言っても広いぞ。住所はわかるの?」 「噂で聞いただけなので詳しくは……」 「現地で聞いてみるしかないな。鈴鹿、とりあえず飛んでみて」 「わかりました。でも、パジャマのままで行くんですか?」 「わあ、待って! すぐ顔を洗って着替えてくるからーーっ」  タモちゃんはキツネ柄のパジャマをパタパタさせておへそを見せると、洗面所へと駆け込んだ。
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