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♯3 髪が火色に染まるとき
タモちゃんが井戸から飛び出て幼子たちを呼び寄せる。
「こっちよ!」
幼子たちは助けを求めてタモちゃんに駆け寄ってきた。
篝火ゴーレムの一体が、自らの体から取り出した松明を投げつけるが。
タモちゃんまであともう少し!
タモちゃんが手を伸ばしたその先で。
幼子たちが。
「あっ……」
火に包まれた。
炎はあり得ぬ早さで燃焼し、小さな骸がふたつ、タモちゃんの目の前にグシャリと転がる。
タモちゃんの髪の毛が紅蓮に染め上がっていく――。
「おまえら……、魔術だか、魔法だか知らないが、全部あたしがぶっ潰してやる!」
篝火ゴーレムたちがタモちゃんを取り囲み。
自らの体から、燃えさかる松明を取り出して、一斉に投げつけた。
四方八方から降り注ぐ炎の雨に、タモちゃんは。
「その昔、あたしを手込めにしようとした火の妖怪がこう言ったのよ。『どうせ狐火しか出せないんだろう? 俺様には効かないぞ』ってね。だから水を出してやったわ。こうやってさあ!」
タモちゃんが念を込めた瞬間。
「来い! 天翔龍撃水!」
涸れ井戸から龍の姿をした鉄砲水が、怒濤の如く噴き出してきた。
龍の鉄砲水は飛散して、降り注いでくる松明を撥ね除ける。
そして再び集束すると、次々と篝火ゴーレムたちを飲み込んだ。
「あっけない。魔術なんてこんなもの? でもおかしいわ。この程度で疲れるなんて……。まさか体が成熟してないからか? はあ、はあ、強い眠気が……、抗えない……」
タモちゃんの意識が急速に遠のいて。
「まずい……」
その場に崩れ、泥のように眠ってしまった。
その途端。
龍の鉄砲水が消滅する。
グレーの髪になり、動かなくなってしまったタモちゃんに、篝火ゴーレムたちの投げつけた松明が。
容赦なくゴゴゴと迫り来た。
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