♯14 大切な思い

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♯14 大切な思い

「だが簡単にはいかねえぜ? 宮殿の壁を見て見ろ。一見、人型のアートみたいになってるが、あれはぜんぶ屍人形だ。数千……、いや数万体はいるだろう。やつらが一斉に襲いかかってきたら、さすがに俺でも対処できねえ。それに、お嬢が人質に取られてるってことが1番の問題だ」  ジュテームが「どうよ?」と見つめると。  エターニャが自信満々に胸を張って。 「デッドリィはわたしが勘当されたことをまだ知らない。わたしがジュテームの死体を持って行けば、大喜びで受け入れてくれるだろう!」  それを聞いて。 「俺に死ねと?」  ジュテームがガクリと項垂れた。  エターニャは口元を伸ばしに伸ばして。 「そこでだ! ここに仮死状態になるポーションを用意した!」  作戦を察したジュテームは。 「…………」  エターニャをじっと見据えて押し黙る。 「毒かも知れないと思っているな。だが、タモちゃんのところまで無傷で行けるぞ。さあ、わたしを信じるか?」  エターニャが真面目な顔で見つめ返すと。  ジュテームは、ふんと鼻で息をつき。 「小生意気なガキだ。なあ、ひとつ、関係ないことを聞いてもいいか?」 「なに?」 「俺って、老けて見えっかな」  今度はジュテームが横を向いて、恥ずかしそうに鼻をかく。 「それは知能がってことか?」 「てめえ、泣かすぞ!」  エターニャは小首をかしげて、しばし憶測したのちに。  少し笑って、こう言った。 「歳がひと桁の者からすれば、例え相手が未成年であろうとも、10も歳が離れていたら、だれでもオジサンに見えるだろう」  それを聞いたジュテームは、相好を崩して一笑し。 「なるほどな!」  合点がいったように頷いた。 「子供の頃は、そうだっただろ?」 「そんなの覚えちゃいねえ。覚えちゃいねえが……」  ジュテームはニッタリ笑って。 「おまえを信じてやろうじゃないか。もしも俺を殺すだけなら、もっと派手に殺るんだろ? 毒殺なんてエターニャ様の柄じゃねえよな!」  仮死状態になるポーションを奪い取ると。  ひと口に飲みきった。 「その度胸。タモちゃんは大切に思われているんだな。うらやましいぞ……」  エターニャのつぶやきを聞き終えることなく、ジュテームは意識を手放した。
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