♯6 ちょろい人が好き

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♯6 ちょろい人が好き

 祭り囃子と生徒たちの威勢の良い呼び込みが飛び交うさなか。 「まずは露店から見て回りまっ……あ!」  鈴鹿が促すまでもなく。 「わーい!」  タモちゃんたちが飛び出した。  道の両端にずらりと並んでいる色とりどりの屋台に目移りを繰り返しては、目を輝かせて物珍しそうに駆け巡る。 「鈴鹿、あれなにっ? あれなにっ?」 「チョコバナナですね!」 「こっちはっ?」 「たこ焼きです!」 「そっちのはっ?」 「クレープですよ!」 「もう! 見てるだけ、つまんない!」 「なんか買って! なんか買ってーーっ!」  タモちゃん×エターニャ連合がすねるようにジュテームの服を引っ張り始めた。 「おまえら子供かっ」 「子供だもん!」 「ねーーっ!」 「都合のいいときばっか、子供になってんじゃねえ!」 「ジュテームお兄ちゃんと、楽しい思い出作りがしたいな!」  タモちゃんとエターニャが、幼い顔つきで上目遣いをし、お目々をぱちくりしてみせると。 「ちっ……、しょうがねえなあ! ぼったくりじゃなきゃ、何でも買ってやる! 言え!」 「わーーいっ」  タモちゃんとエターニャに手を引かれ、ジュテームがひょこひょこ走り出した。 「なんてちょろい人……」 「デッドリィはいらねえのかーー?」 「いりますーーっ! ジュテームお兄ちゃあああんっ」  ジュテームの大盤振る舞いで、ありとあらゆる粉物やスイーツを食い散らかしたところで。 「鈴鹿、あれ、なに?」  タモちゃんが校庭の片隅に設置してある遊具を指さした。  木でできたお馬さんやパンダさんの根元に、バネの柱がついていて。  タモちゃんと同年代くらいの子供たちがそれに座って、ゆらゆらしている。 「あれはスプリング遊具ですね」  鈴鹿がそう答えると。 「へえ、なんかたのしそーだな」  タモちゃんがぽろっとつぶやいた。 「乗りたいの?」  エターニャが上半身を横に傾けて、タモちゃんの顔をニッタリ覗き込むと。 「まさか! あんなの子供の乗り物よ! グリングリン、ぶるんぶるん、しそうなくらいでっ……」 「行こう!」 「なっ、ちょっと!」  エターニャがタモちゃんの手を引き、駆けだした。
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