♯9 まんざらでもない?

1/1
前へ
/192ページ
次へ

♯9 まんざらでもない?

「俺はここで待っとくな」 「ジュテームさんも着て下さいっっ」 「俺がかわいくなったって、誰も得しねえだろ?」 「ボクが得しますっ!」 「お、俺でもか?」 「はひっっ」  鈴鹿の真摯な眼差し(ハート目)に。  ジュテームは少し赤くなって。 「保護者なのに何かあったらまずいしよ。一緒に行ってやるか」 「やたーーっ!」  雨合羽カエル姿になったタモちゃんたち一同に。  鈴鹿は震えるほどに感奮し! 「みなさん、魚拓にしたいくらい、めっちゃかわひいですーっっ! はうわーーっ!」  ストレートパンチのようなサムズアップをして見せた。 「なんで魚拓……?」 「墨があったら塗りかねないぞ……」  それにちょっと怯える子供タモちゃんとエターニャだが。 「あにゃたっ! 写真を撮って! はやきゅっっ」  そんなことはお構いなしに、鈴鹿はスマホを太っちょ忍者に手渡して。 「お、おう……」  ポージングをバッチリ決める。  戸惑う太っちょ忍者がスマホで集合写真を撮ったところで。 「お化け屋敷の概要を説明をしてやろう。中にいるお化けはすべて魔忍法で作ったもの。遠慮せず倒してしまって良いぞ。以上だ!」 「それだけ!」  子供タモちゃんがにっこり笑うと。 「はっはっは。勝ち気な娘よ! このお化け屋敷は実戦型ゆえ、百聞は一見にしかず、と言ったところだ!」 「クリアできたら本当にお肉くれるの?」 「くれてやるとも。A5ランクの和牛一頭分をな! だが、そう簡単には渡しはせん! マジでちびっても知らんからな。どうなっても知りはせんぞ? それでもやるか、お嬢ちゃん?」 「やる! やる! タモちゃん、大暴れするーーっ!」  恐いもの知らずの子供タモちゃんは、無邪気に元気いっぱいだ。  太っちょ忍者はそんなみんなに意味ありげな含み笑いをして。 「では、ご武運を!」  タモちゃんたちを黒いテントの中へといざない入れたのだった。 「よもや救世主と元マジカリストがふたりもいるだなんて思うまい。お肉はもらったぞ!」  エターニャが悪い顔のしたり顔でテントをくぐり。  デッドリィもワクワクしながら後に続いて。 「お化け屋敷に、いい死体があるかしら!」  周りをキョロキョロ見渡した。 「デッドリィさん、死体があっても、ぜんぶ作り物か、死んだふりしてる生徒だから、お持ち帰りしちゃダメですよ!」  などと言いつつ、鈴鹿も足を踏み入れて。 「どうせガキが作ったお化け屋敷だ。ま、子供だましに付き合ってやるか!」  ジュテームがしんがりでついて行く。  タモちゃんたちは雨合羽カエルの戦闘服を装って、黒テントの中へと吸い込まれていったのだった。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加