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♯9 まんざらでもない?
「俺はここで待っとくな」
「ジュテームさんも着て下さいっっ」
「俺がかわいくなったって、誰も得しねえだろ?」
「ボクが得しますっ!」
「お、俺でもか?」
「はひっっ」
鈴鹿の真摯な眼差しに。
ジュテームは少し赤くなって。
「保護者なのに何かあったらまずいしよ。一緒に行ってやるか」
「やたーーっ!」
雨合羽カエル姿になったタモちゃんたち一同に。
鈴鹿は震えるほどに感奮し!
「みなさん、魚拓にしたいくらい、めっちゃかわひいですーっっ! はうわーーっ!」
ストレートパンチのようなサムズアップをして見せた。
「なんで魚拓……?」
「墨があったら塗りかねないぞ……」
それにちょっと怯える子供タモちゃんとエターニャだが。
「あにゃたっ! 写真を撮って! はやきゅっっ」
そんなことはお構いなしに、鈴鹿はスマホを太っちょ忍者に手渡して。
「お、おう……」
ポージングをバッチリ決める。
戸惑う太っちょ忍者がスマホで集合写真を撮ったところで。
「お化け屋敷の概要を説明をしてやろう。中にいるお化けはすべて魔忍法で作ったもの。遠慮せず倒してしまって良いぞ。以上だ!」
「それだけ!」
子供タモちゃんがにっこり笑うと。
「はっはっは。勝ち気な娘よ! このお化け屋敷は実戦型ゆえ、百聞は一見にしかず、と言ったところだ!」
「クリアできたら本当にお肉くれるの?」
「くれてやるとも。A5ランクの和牛一頭分をな! だが、そう簡単には渡しはせん! マジでちびっても知らんからな。どうなっても知りはせんぞ? それでもやるか、お嬢ちゃん?」
「やる! やる! タモちゃん、大暴れするーーっ!」
恐いもの知らずの子供タモちゃんは、無邪気に元気いっぱいだ。
太っちょ忍者はそんなみんなに意味ありげな含み笑いをして。
「では、ご武運を!」
タモちゃんたちを黒いテントの中へといざない入れたのだった。
「よもや救世主と元マジカリストがふたりもいるだなんて思うまい。お肉はもらったぞ!」
エターニャが悪い顔のしたり顔でテントをくぐり。
デッドリィもワクワクしながら後に続いて。
「お化け屋敷に、いい死体があるかしら!」
周りをキョロキョロ見渡した。
「デッドリィさん、死体があっても、ぜんぶ作り物か、死んだふりしてる生徒だから、お持ち帰りしちゃダメですよ!」
などと言いつつ、鈴鹿も足を踏み入れて。
「どうせガキが作ったお化け屋敷だ。ま、子供だましに付き合ってやるか!」
ジュテームがしんがりでついて行く。
タモちゃんたちは雨合羽カエルの戦闘服を装って、黒テントの中へと吸い込まれていったのだった。
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