♯11 禁断のジョーク

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♯11 禁断のジョーク

 顔からシャワーを浴びているかのような状況だが、カエルちゃん雨合羽のお陰で服だけは濡れてない。 「タモちゃん、上機嫌だな!」  子供タモちゃんの笑い声に釣られて、エターニャも笑い出す。 「できれば長靴も貸して欲しかったわ。靴の中がぐちょぐちょよ!」  デッドリィはジュテームの肩に手を置いて、片足を持ち上げた。  雷光で辺りが明るく明滅したとき。 「待て。おまえら誰だ? 鈴鹿とデッドリィをどこへやった!」  ジュテームが肩の手を払いのけると。 「なに言ってるの。恐いこと言わないで。ここにいるじゃない!」 「最初から隣にいましたよ?」  デッドリィと鈴鹿が不安げに「ねえ」と頷き合う。  ジュテームは目を凝らしてふたりを見比べたのち。 「メイクが取れたら誰だかわっかんねえな! なぁんて、な! がっはっは!」  馬鹿笑いをしてみせると。  デッドリィと鈴鹿のこめかみに、怒りのバッテンマークが浮かび上がった。 「永久凍土に閉じ込めるわよ」 「ボク、証拠隠滅の方法、各種知ってます」  ふたりから溢れ出る本気の怒気に。 「じょっ、冗談だっつーの! こんな美人、見間違うわけねえよ? な! な!」  ジュテームが慌ててフォローに回ったのだけれど。  ふたりはなぜだか火花を散らしながら。 「鈴鹿ちゃんなら盛ればもっと綺麗になるんじゃない?」 「デッドリィちゃんこそ、厚化粧の余地がありますよ!」 「そもそも落ちるほどメイクなんかしてないし!」 「元が良いからお化粧なんていりません!」 「ですよねえ……?」「ですよねえ……?」  冷血な眼で脅迫的な同意を求めてきたものだから。  ――乙女、こええ~~~……。  ジュテームは背筋を凍らせた。 「忍者さんは濡れても平気なの?」  子供タモちゃんが、太っちょ忍者にカラッと笑いかけると。 「この装束には撥水の術がかけてあるゆえ、これこの通り、濡れんのだ!」  確かに布地は撥水しているのだが。  頭から流れてきた雨水が、唯一露出している両目へと、滝のように流れ込んでいる……。  みな、その馬鹿馬鹿しい状況に噴飯して。 「とりあえず、屋敷の方へと進みましょうか!」 「おおーっ!」  鈴鹿に促されて、子供タモちゃんを先頭に、皆は屋敷の玄関口へと近づいた。  屋敷の玄関扉は引き戸になっていて。  格子状の木でできた枠の中に、磨りガラスが嵌め込んである。  時代劇に出てくるような忍者屋敷ではなくて、比較的近代に建築された様式のようだ。  子供タモちゃんが引き戸の金具に触れた途端。 「ぎゃああーっ」  バチバチッと電流が体中に走り回った。  跳び上がって感電している子供タモちゃんを、ジュテームが極小の衝撃波を放って引き戸から引き剥がす。 「お嬢、大丈夫かっ?」 「ぎゃはは! たぁのしーっ!」  子供タモちゃんは髪の毛を爆発させながらもご満悦だ。
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